野村訓市のアップル発表会レポート #01 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

野村訓市のアップル発表会レポート #01

あのMacintoshの発表からきっかり30年後、2014年9月9日の朝10時(現地時間)からのApple新製品発表会に招待された野村訓市が、現地から速報。〝世紀の発表〟なるや、ならざるや!?

発表会場に入るためのパス。
ニューヨークを月曜の夕方に飛び立ち、サンフランシスコに向かうことになった。国内移動なのに6時間半のフライト、3時間の時差。その前の晩にどんちゃん騒ぎで飲んだため、夕方になっても一向に気分が優れない。開けたタクシーの窓から外の空気をパクパク金魚のように吸う自分の顔がサイドミラーに映っている。そもそもシスコに行ったとしても滞在時間は14〜15時間しかない。そしてまたニューヨークに戻るのだ。シスコにさえこなければ、今頃ビールでも飲みだしながら、友だちと飯の約束でもしていたはずだ。きっかけは8月29日に貰った電話だった。

「お久しぶりです。お元気ですか? 早速ですが9月9日はどうしていらっしゃいますか?」

「おっ、アップルの発表会の日じゃないですか?」

ニュースで知っていたことを口にする。

「さすがです。ぜひお越し下さい」

「いいですね。でもその頃は仕事でちょうどニューヨークなんですよ」

「ぜひお越し下さい」

あれ、無理目なんだけどな。

「何か凄い発表がでるんですか?」

「一切お話ができないのです。でも素晴らしいイベントになると思いますよ」

「興味あるけどな、シスコのどこでやるのですか?」

「詳しい事はお伝えできません」

コンフィデンシャル、それはアップルを語る上では欠かせないこと。要は何を聞いたって絶対教えてくれない。あの手この手で質問しても、仏様のような微笑みを返されるだけで、絶対誰も話してはくれない。じゃあ最初から誘うなよ! と思っても、連絡はくれる。なんかのプレイのような関係。でも誰もがそのプレイを理解し、楽しんでるフシもあるからよくわからない。巷に溢れる噂に耳を傾け、何となくを理解し、予想を勝手に進めながら話す。面倒くさい性格だといやそれまでだが、無視をすることもできない。

結局、ニューヨークから1泊で訪れて戻る弾丸旅行の日程となった。だいたいiPhoneは好きで使ってるけど、発表会までいくというのは(iPhoneのだと仮定して)どうなのかとも思ったし、何か新製品もでるっていう噂もあるが、そのためにチャット状態のレポートにかじりつくほどのフリークではないのだから俺が行くのはどうかとも思った。しかし、しごく真っ当なユーザーであり、ファンではあるというギーク目線ゼロで見るローンチイベントというのは面白いかもしれない。もののデザインや機能もいいけれども、行きのバスから会場までを全部みて、発表会そのもののデザインを見ようという気になってきた。

しかし、肝心の目的も伝えず世界中から人を集めれちゃうってのはなんなんだろうなー。発表会というよりこれはなんか凄いバンドが1年ぶりにライブをスタートする、そんな感じに近いのかなー。空港で拾ったタクシーの運転手のおじさんにも、マービン・ゲイのイヤらしいバラードをかけながら、「アップル?」と聞かれました。「新しいiPhone欲しいよブラザ、俺のはまだ4なのさ」とおじさん、それはちょっと進化しなさ過ぎだろうマイメン」と僕。でもすぐにこんな話ができてしまうのはやはり凄い。羽田から拾ったタクシーで「今日はト●タの新車の発表会だね」とか絶対話にならんでしょう。どんな人達が明日は集まっているのやら。

〝iHotel〟にでも泊まれてりゃテンションもさらにあがるのだが、目が覚めたのは市内の普通のホテル。朝6時起床、45分にロビーに集合ときた。目指すは本社があるクパチーノ。30年前の今日と同じ日、同じ場所で初代のマッキントッシュが発表された由緒正しき場所。移動が不便でもあえてそこに世界から人を集めるということはマック級の何かが発表されるのだろうか? あまり興奮もしていなかったのだが、朝の集合場所であるホテルのロビーにいると世界中からきた取材のプレス関係者がコーヒー片手にやんややんやと話している。朝6時半のテンションではない。映画やファッションのショーとのテンションとはまた違う感じ。なんだか「いよいよだね!」感がどこからともなく自分の胸の中にむくむくと盛り上がってくる。人間とは現金なものだ。

コーヒーやパンが並ぶバンケットルームに日本のプレス関係者が並ぶ。「予想以上にシスコって寒いのね」という話と、「モバイル界も歴史が積み上げられたものだ」云々の話が聞こえてくる中、コーヒーをすする。ここでバスに乗るときから首にかけるザ・プレスパスを貰う。首からかけるのは嫌いだ。リンゴのマークだけのシンプルなカード式。それを首からかけるとバスに乗り込む。対面式のでかいバス。まるで修学旅行で、世界各国のプレスと一緒に乗り込み、一路クパチーノのパフォーマンスセンターを目指す。バス内には適当なクラシックロックのラジオが流れる。ザワザワと誰もが話している。「iPhoneが大きくなるのかな」「ポケットに入らなくなると困るな」「女の子は大きいのが好きなんだよ」「マーク・ニューソンがデザインチームに入ったのがアナウンスされるのかな」…。丘陵地帯の真ん中をバスは進んでいく。アップルの関係者の話だと、何か大きな発表があり、しかも誰もが自信満々らしい。マッキントッシュの発表場所を会場に選んだくらいなのだから、iPhoneだけじゃ決して無いだろう。それが皆の見解。会場でもらえればいいなぁ。
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