〈三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー〉|川合将人のインテリアスナップ | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

〈三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー〉|川合将人のインテリアスナップ

インテリアスタイリストが街で見つけた素敵な空間を紹介する連載第10回目は、荒川修作+マドリン・ギンズによる〈三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー〉です。荒川修作とマドリン・ギンズの建築設計で、2005年東京都三鷹市に竣工した、地上3階建て3棟、全9戸からなる超個性的な住宅です。

目の前を走る東八道路からもよく目立つカラフルなファサード。
こんにちは。今回は、僕がこれまで持っていた住宅や建築、インテリアに対する常識や既成概念を清々しいまでに破壊された集合住宅〈三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー〉をご紹介します。

設計は、岐阜の〈養老天命反転地〉などで知られる美術家・建築家、荒川修作とパートナーのマドリン・ギンズ。盲ろう者として障害を抱えながらも、教育家や著作家として数多くの功績を残したヘレン・ケラーに捧げる工夫が詰まった住宅です。

うれしいことに、居住者でなくとも宿泊できるショートステイプログラムが用意されており、3階にある3LDKの「気配コーディネーティングの部屋」に滞在しました。
3階に位置する、宿泊体験ができる3LDKの住戸内部にて、奥にある畳の部屋から玄関への眺め。どこを見ても目に飛び込んでくる色の洪水に加え、一般的な住宅設備とはかけ離れた造形が連続しています。最初は脳が戸惑っているような感覚に襲われましたが、慣れると快適そのもの。屋外で過ごしているような心地よさを感じました。
住戸の中心は階段で降りるダウンフロアのキッチンスペースになっていて、その周囲にぐるりと各部屋が配置されています。オール電化の住宅なので、キッチンのコンロはIHです。コンパクトですがオーブンレンジやグリルなどもビルトインされていて使い勝手も悪くありませんでした。
グリーンのダクトや電気配線のパイプが配された天井には頭が輪になったアイボルトがたくさん埋め込まれていて、それぞれ耐荷重が約100kgくらいあるので、人がぶら下がっても大丈夫なんだとか。もちろん収納に利用したり、布を下げて間仕切りにしてもOK。居住者がどのように使うのかが試されます。
玄関の扉を開けると、まずは室内の全ての面から溢れてくる鮮やかな色の洪水に圧倒され、しばらく立ち尽くしてしまいました。壁や天井面の塗装に使用されている色はこの三鷹天命反転住宅のためだけに調色された全14色があり、これを基準色として内外装に使用されています。また各住戸で全て色の配置も変えてあるそうです。

ようやく目が慣れて室内を歩き始めると、足の裏には、砂を固めたような凹凸のある床の感触が伝わってきます。床の下がった低い位置にあるキッチンを中心にして、室内はこの凸凹の連続した床が4つある全ての部屋をつなぐ動線となっています。
球状の部屋と畳部屋の中間に設置された、天井まで続く赤い梯子。まるで砂浜に埋まっているように見えます。近くには天井からロープで設置されたハンモックが備えられていて実際に使用も可能。窓面の中央下部はハンドル操作で開閉でき、茶室のにじり口のような感じで屋外のバルコニーへ出入りできるようになっています。
この床、見た目は非常に歩きにくそうですが、そんなことはなく、砂浜の上を歩いているような感触と全方位的に配された窓から入ってくる豊かな自然光が合わさり、歩くたびに屋外を散歩しているような開放感に包まれました。

室内を案内してくれた、荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所のスタッフであり、この三鷹天命反転住宅の支配人でもある松田剛佳さんに話を聞くと、凹凸は大小2種類あり、それぞれ大人と子供の土踏まずのサイズになっているそうです。さらには場所によってこんもりと丘のように盛り上がっていたり、反対に掘り下げたようにくぼんでいたりと、同じ階とは思えないほど高低差のある変化に富んだフロアレベルとなっています。

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