〈ストマックエイク〉宮崎信恵の俯きつつも、前へと進む物語。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

〈ストマックエイク〉宮崎信恵の俯きつつも、前へと進む物語。

『カーサ ブルータス』2018年7月号より

イラストレーター〈STOMACHACHE.〉の姉、宮崎信恵が初めての絵本を発表しました。

雑誌や広告で活躍するイラストレーター〈ストマックエイク〉。姉妹で活動する彼らの姉、宮崎信恵が初の絵本を発表した。その読後感は一編の詩のような軽やかさ。分かりやすい着地点がないところにも、不思議な心地よさがある。この本が生まれた経緯を本人に聞いてみた。

Q 原案は、4年前に作った私家版の絵本作品だそうですね。
はい、2014年の個展で発表した作品です。その個展を今回の出版元の〈ELVIS PRESS〉の黒田夫妻が見ていてくれて、声を掛けてもらいました。最初は新作の絵本のオファーをいただいたのですが、その私家版をたくさんの人に見てもらえるよう作り直したいという思いがあって、ページを足して、今回の本が仕上がりました。
Point_01私家版の原案を見開きに。 私家版で片ページに描いていた絵は、見開きに描き直した。ほぼ同じモチーフだが、より伸びやかな構図に。
Q ストマックエイクのイラストに比べると静かな印象を受けます。
そうかもしれません。より個人的な表現というか、自分の地が出ていると思います。主人公がひとり歩いていく中で、落ち込んだり、悩んだり、立ち直ったりしながら、いつもと変わらない毎日を生きていく。そんな普通のようで幸せな時間を淡々と描いています。

Q 物語は前向きですが、押しつけがましい明るさはないですね。
確かに、明るい絵本ではないですね(笑)。でも、暗いことは必ずしも悪いことではないと思っているんです。主人公は下を向き、目をつむって歩いていますが、下を向いて歩くというキーワードは、以前からよく描いているもの。目を閉じているのも、眠っているような、何か考えているような状態を描きたかったのかもしれません。
Point_02言葉が先に、絵はその後から。 「草をかき分けて進んだ」という一文から生まれた見開き。言葉からイメージを広げたページが多いという。
Q 言葉のリズムも面白いです。
言葉には昔から興味があって、今も絵だけではなく、俳句や詩も書いています。例えば、この中に「正体をなくしたり」という一文が出てくるのですが、これは以前から気に入っていたフレーズ。“酔っ払って意識がもうろうとする”ことを意味する表現で、日本語ならではの面白さですよね。

Q この絵本は大人向けですか?
便宜上、「絵本」と呼んでいますが、ある特定の年代の読者をイメージして作ってはいません。お酒を飲む場面もあるけれど、私の娘も気に入って読んでくれているし、子どももいずれは大人になるので。言葉と絵の世界をシンプルに楽しんでもらえたら嬉しいです。
Point_03転写による独特の濃淡。 山肌の緑は、印刷物にシンナーを塗り、それを紙に貼り付け、上からこすって色を転写。独特の濃淡が出る。

『See You Tomorrow』 

私家版として2014年に発表した絵本をもとに、描き下ろしページなどを加えて生まれた一冊。名古屋のブックショップ〈ON READING〉の出版レーベル〈ELVIS PRESS〉から出版。1000部限定。2,500円。

宮崎信恵

みやざきのぶえ 1984年徳島生まれ。イラストレーター〈STOMACHACHE.〉として妹、宮崎知恵と共に活動。刺繍、パッチワーク、陶芸、木版画、俳句など表現手法は多彩。徳島で自然農も実践する。