DESIGN
ミニマルな光を操るマイケル・アナスタシアデスの美的空間|土田貴宏の東京デザインジャーナル
October 31, 2018 | Design | casabrutus.com | text_Takahiro Tsuchida
この数年で急激に注目度を高め、数々の一流ブランドのプロダクトをデザインするマイケル・アナスタシアデス。照明ブランド〈フロス〉の新作《アレンジメンツ》を使ったインスタレーションには、卓越したミニマリストとしての新基軸が表現された。
時代に左右されない純粋なフォルムを用いて、印象深いプロダクトを次々と発表しているマイケル・アナスタシアデス。近年は活動の幅を広げているが、彼が最も長く取り組んできたのは照明器具のデザインだ。イタリアを代表する照明ブランド〈フロス〉からの新作《アレンジメンツ》は、幾何学型のパーツをユーザーが自由に組み合わせることができる。
「使う人の創造性を引き出して、自分だけのオリジナルのシャンデリアを作り出す、モジュール式の照明器具。それが〈フロス〉とともに《アレンジメンツ》を開発する出発点になりました」とマイケル・アナスタシアデスは話す。
「使う人の創造性を引き出して、自分だけのオリジナルのシャンデリアを作り出す、モジュール式の照明器具。それが〈フロス〉とともに《アレンジメンツ》を開発する出発点になりました」とマイケル・アナスタシアデスは話す。
《アレンジメンツ》は、大中小の円、大小の正方形、大小のティアドロップ型、そして直線と折れ曲がった線の計9種類のパーツで構成される。これらのパーツが生み出す無限のバリエーションは、あらゆるタイプの空間を豊かな光で彩る。
「開発中はもっとも多くのバリエーションも検討しましたが、個々のパーツの関連性を考えながら最終的にサイズやプロポーションを絞り込みました。デザインのインスピレーションのひとつはジュエリーです。ジュエリーは、簡素な要素が関係しあって完成し、美しい均衡を保ちます。自然に揺れる様子や、人の体とのスケール感にも触発されました」
「開発中はもっとも多くのバリエーションも検討しましたが、個々のパーツの関連性を考えながら最終的にサイズやプロポーションを絞り込みました。デザインのインスピレーションのひとつはジュエリーです。ジュエリーは、簡素な要素が関係しあって完成し、美しい均衡を保ちます。自然に揺れる様子や、人の体とのスケール感にも触発されました」
幾何学的なフォルムからデザインを発展させていくのは、アナスタシアデスによるプロダクトに一貫したスタイルだ。ただしこれまでは、そのフォルムのミニマルな美しさを端的にとらえたものが多かった。それに対して今回のインスタレーションは、過去の作風と一線を画するような装飾性も感じさせる。
「私のミニマリストとしてのアプローチが変化したわけではありません。そもそも最初に《アレンジメンツ》を発想した時は、1つか2つ、多くても数点の光のリングが宙に浮かぶ様子をイメージしていたし、個人的にはやっぱりそれが好みです。一方、今回のインスタレーションは、このように広い空間で使う場合の可能性を示すもの。この製品は、光によって空間を美しく変容させることができるのです」
「私のミニマリストとしてのアプローチが変化したわけではありません。そもそも最初に《アレンジメンツ》を発想した時は、1つか2つ、多くても数点の光のリングが宙に浮かぶ様子をイメージしていたし、個人的にはやっぱりそれが好みです。一方、今回のインスタレーションは、このように広い空間で使う場合の可能性を示すもの。この製品は、光によって空間を美しく変容させることができるのです」
アナスタシアデスの斬新な発想を、まったく無駄のないフォルムとともに実現させた〈フロス〉の技術力にも、彼はあらためて感心したという。個々のパーツには1か所または2か所のジョイントがあり、そこで連結させることでユニット全体を発光させる仕組みだ。この機構は《アレンジメンツ》のために開発され、特許を取得しているという。また〈Make your Arrangements〉というユーザー向けアプリケーションも用意されており、空間の広さや天井の高さに合わせて、画面上で《アレンジメンツ》の組み合わせをシミュレーションできる。
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illustration Yoshifumi Takeda
土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。