DESIGN
土田貴宏の東京デザインジャーナル|楽しくて奥深い、藤城成貴のゲーム。
May 18, 2017 | Design, Art | casabrutus.com | photo_Kenya Abe text_Takahiro Tsuchida
独自のアプローチを貫くデザイナー、藤城成貴の新作は家具でも日用品でもなく“ゲーム”。そこに込められた意図とは。
プロダクトデザイナーとして活躍する藤城成貴が、ゲームをテーマにした個展を渋谷の書店〈ユトレヒト〉で開催している。藤城は1990年代後半から〈イデー〉で家具などのデザインを手がけた後に独立。近年は〈エルメス〉の《petit h》やデンマークの〈HAY〉はじめ海外のブランドとのプロジェクトも多い。自身の手を使ったもの作りを重視するアプローチと、現代的な審美眼が彼の持ち味だ。
今回、発表されたゲームは12点。すべてA4サイズのボックスで、手に持って動かしながら中のグレーのボールを決まった場所に移動させるシンプルなものだ。しかし、そこにデザイナーとしての彼の姿勢や感性が凝縮されている。
「フランスに行くたびに骨董市などで買っていた、小さな箱の中のボールを動かすゲームがあるんです。そのサイズを大きくすると、箱の中に奥行きができ、建築的な空間が作れそうだと思いました」と藤城。古くから親しまれてきた既存の物事をヒントに、新しいクリエイションのモチーフを見出したということだ。それぞれのゲームには、確かに建築模型を思わせる趣もある。
材料の多くは建材などのサンプルや、プロダクトの模型を作るための素材で、以前から仕事場にあったものが大半だという。デザインの現場では普通に流通しているものばかりだ。
「自分で色を塗ったりはせず、その素材の持つ色を活かし、大きさだけを合わせて構成しました。素材のテクスチャーや凹凸によって、ボールの転がり方も変わる。その感触が手から伝わってくるんです」
「自分で色を塗ったりはせず、その素材の持つ色を活かし、大きさだけを合わせて構成しました。素材のテクスチャーや凹凸によって、ボールの転がり方も変わる。その感触が手から伝わってくるんです」
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illustration Yoshifumi Takeda
土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。