ART
内藤 礼─明るい地上には あなたの姿が見える
『カーサ ブルータス』2018年9月号より
August 25, 2018 | Art | a wall newspaper | text_Naoko Aono
目を凝らすとかすかに浮かび上がってくるもの。風に揺られ、小さな光を反射して控えめな存在感を主張するオブジェ。内藤礼のアートはそんなひそやかさで見る者の周りをやさしく包む。そんな彼女の過去最大規模の個展が水戸芸術館で開かれている。
空気、水、重力といったものを作品に取り込む彼女のアートの中でも光は重要な要素の一つだ。今回は自然光のみで作品を展示、繊細に移り変わる様相を味わうことができる。内藤はあるとき「私たちは遠くから眼差され、慈悲を受けとっているのではないか」と感じるようになったという。彼女の作品が形作る空間はそんな眼差しの気配に満ちている。
今回の個展の会場は磯崎新の設計。内藤はこれまで西沢立衛とコラボレーションした〈豊島美術館〉など、空間に対して敏感に向き合い、じっくりと対話しながら場を組み立ててきた。全8室のギャラリーが一つの作品となって観客を包み込む。
〈水戸芸術館現代美術ギャラリー〉
茨城県水戸市五軒町1-6-8 TEL 029 227 8111。〜10月8日。9時30分〜18時(9月1日からは〜17時)。月曜休。一般900円。