ART
青野尚子の「今週末見るべきアート」| たくさんの線の声を聴く展覧会。
May 27, 2015 | Art | casabrutus.com | text_Naoko Aono
森美術館で開催中の「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」に呼応する形で開かれている、銀座メゾンエルメス フォーラム「線を聴く」展。この展覧会では、線のさまざまな表情が楽しめる。
展覧会タイトルの「線を聴く」にはやや奇妙な響きがある。線は聴くものではなく、見るものでは? 視覚はある一定の方向にしか働かないけれど、耳は360度どの方向からの音も聞くことができる。この展覧会では線が生まれるきっかけ、スタート地点にフォーカスをあてたいと考えた、と企画者は言う。
苔でできた迷路の写真は髙田安規子・政子の作品。迷路の形に切り抜いた紙を苔の上に置いてつくるのだが、数時間後には迷路の形は崩れてしまうのだそう。入り口と出口がある迷路は人の一生や宇宙を表すとも言われる。一本の線に長大なものが凝縮されている。
カールステン・ニコライのドローイングはアトリエ・ワンの《マンガ・ポッド〈ジャイアント〉》に展示されている。ニコライの作品は数式など規則性のあるものを視覚的なパターンに変換したり、二つのパターンが重なってできるモアレをモチーフにしたもの。彼はもともと自分の作品制作のためのアーカイブを作ろうとしていたのだが、それをオープンソースにして他の人の新しいクリエイションにつなげたい、と考えた。本棚のある休憩所としてデザインされた《マンガ・ポッド〈ジャイアント〉》はニコライのコンセプトにはぴったりだ。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。