ART
鬼才・会田誠が都市の未来図を発表!|青野尚子の今週末見るべきアート
| Art, Architecture | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
時にエロやグロの混ざった作風で物議を醸す会田誠。率直に言ってお行儀がいいとはいえない彼が提案する都市の姿とは? 本人の解説も交え、驚きの都市計画を紹介します!
そもそも、なぜ会田誠が都市計画を発表することになったのか。それはこの展覧会を公益財団法人大林財団(理事長 大林剛郎)が助成しているからだ。ゼネコンの大林組創業者が私財を投じて、20年前に設立されたこの財団はこれまで都市に関する研究を支援してきたのだが、ここに至って「都市や街に興味を持つアーティストが考える都市像」を見てみたい、と思うようになったらしい。といっても「都市に興味を持つアーティスト」は他にもいるだろうに、よりによって会田誠を選んだその男気には敬意を表したい。
選ばれた会田は、よくも悪くも期待を裏切らなかった。
「理想の都市計画を展示すると思われている方もいるようですが、僕は基本的にネガティブ気味のアーティストですから、理想なんてあまり考えてないんですね。しかもジオラマまで作っておいてナニですが、実現させる気はさらさらない。アーティスト独自のリサーチを期待されているのだとも思いますが、リサーチすべきかどうか10分ぐらい考えた結果、しないことに決めました」
「理想の都市計画を展示すると思われている方もいるようですが、僕は基本的にネガティブ気味のアーティストですから、理想なんてあまり考えてないんですね。しかもジオラマまで作っておいてナニですが、実現させる気はさらさらない。アーティスト独自のリサーチを期待されているのだとも思いますが、リサーチすべきかどうか10分ぐらい考えた結果、しないことに決めました」
でも、根が真面目な会田はなぜ自分が選ばれたのか、考えを巡らせた。彼は2000年に半年ほど、ニューヨークに滞在している。そのときにうろうろしていたセントラルパークから着想したのが〈新宿御苑大改造計画〉だ。2001年に発表したこの作品が、今回の展覧会につながったのでは? と彼は言う。
「セントラルパークを見て、都会の真ん中にこんな心地いい場所があるのが羨ましくて、ちくしょー、東京にはこんなのないぞ、と思った。それで作ったのが《新宿御苑大改造計画》です」
「セントラルパークを見て、都会の真ん中にこんな心地いい場所があるのが羨ましくて、ちくしょー、東京にはこんなのないぞ、と思った。それで作ったのが《新宿御苑大改造計画》です」
大きな黒板にぎっしりと描かれた「改造計画」はニューヨークからの帰国直後に制作したもの。文字がぎっしりと書き込まれた黒板は読み応えあり。「露天風呂を作る」、「日の出・日の入りに合わせて開閉場する」、「自然の景観を演出するため工業的な素材や工法は禁止」、「動植物はできるだけ日本固有種を優先する」など、かなり具体的だ。今回の展示ではそれにジオラマが追加された。
新作の《NEO出島》も大胆だ。霞が関の国会議事堂などの上に“人工土地”を作り、現代の“出島”にしようというもの。公用語は英語のみ、入るにはビザが必要だ。「英語をしゃべれない日本人は国際化しにくい。それなら国際派、国内派、ぱっきり分けてしまったほうがいいのでは?」というのがアイデアの元だそう。なるほど、そう言われてみればその方が何かと便利かもしれない。
その他に地下1階には、ヨーロッパの広場によくあるオベリスクがぶるぶる震えている《シェイキング・オベリスク》(地震のないヨーロッパに多くあるオベリスクを、地震が名物の日本に持ってきた、という作品)や、首都高を乗り越えてあり得ない角度でそびえ立つ《シン日本橋》(このプランを先に発表していた盟友・山口晃に敬意を表して「ニセ口晃」と署名されている)などが並ぶ。
Loading...

青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
