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ゴッホ展:ファン・ゴッホがたどった土地を旅したことを思い出した。|鈴木芳雄の「本と展覧会」
| Art | casabrutus.com | photo_Keiko Nakajima(book) text_Yoshio Suzuki editor_Keiko Kusano
ファン・ゴッホの夜の糸杉の絵や黄色い家の絵が日本に来ていて、展覧会が開催されている。東京、名古屋、福岡と巡回するその展覧会を見ていて、10年前、雑誌の取材で行ったファン・ゴッホゆかりの土地と美術館のことを僕は思い出していた。彼が見たもの、希望を抱いたこと、挫折し、落胆した場所。作品はそれを語りかけてくる。
19世紀後半に生きた一人の画家。たった37年の人生、しかも本格的な画家としての活動期間は10年ちょっとに過ぎない。しかし、多くの作品とあまりに懊悩にあふれるストーリーをもつ。フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホという人。
日本でも彼の絵はたいへんに人気がある。大規模個展は何年かに一度、開催されるくらいに。今も彼の絵の最大の個人コレクター、ヘレーネ・クレラー=ミュラーに焦点を当てた展覧会『ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』が日本を巡回している。
日本でも彼の絵はたいへんに人気がある。大規模個展は何年かに一度、開催されるくらいに。今も彼の絵の最大の個人コレクター、ヘレーネ・クレラー=ミュラーに焦点を当てた展覧会『ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』が日本を巡回している。
この展覧会を見ながら、僕は10年ほど前に雑誌『ブルータス』の「印象派特集」のために、ファン・ゴッホの人生をたどった旅を思い出していた。彼のゆかりの地を巡った。アムステルダムの〈ファン・ゴッホ美術館〉、オッテルローの〈クレラー=ミュラー美術館〉をまず訪れて、そのあと、空路でマルセイユ、そこからクルマでアルルとサン=レミ。パリに戻って、オーヴェル=シュル=オワーズへ。本稿はその旅の思い出も絡めながら書いていく。
〈クレラー=ミュラー美術館〉には実はこのとき初めて行った。収集家クレラー=ミュラー夫妻に敬意を評して彼らの名を冠しているが、オランダ国立の美術館である。デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にあり、すばらしい環境だ。アムステルダムからは鉄道とバスで1時間ちょっとかかる。今回の日本の展覧会では、この美術館からファン・ゴッホの油彩画28点と素描・版画20点が来日している。
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鈴木芳雄
すずき よしお 編集者/美術ジャーナリスト。『ブルータス』副編集長時代から「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「若冲を見たか?」など美術特集を多く手がける。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』など。明治学院大学非常勤講師。
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