8点が一堂に並ぶ、話題の『フェルメール展』へ急げ! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

8点が一堂に並ぶ、話題の『フェルメール展』へ急げ!

現存する作品はわずか35点とも言われるフェルメール。貴重な作品がオランダ、ドイツ、アイルランド、アメリカなどから来日中です。なんと8点がひとつの部屋にずらりと並ぶという、日本初の試みも話題に。絶対に見逃せない展覧会です。

本展の目玉、フェルメール《牛乳を注ぐ女》は「フェルメール・ルーム」の奥に展示されている。
フェルメール作品だけ8点が集められた「フェルメール・ルーム」。寡作だった画家の変遷をたどることができる。
本展の目玉、フェルメール《牛乳を注ぐ女》は「フェルメール・ルーム」の奥に展示されている。
フェルメール作品だけ8点が集められた「フェルメール・ルーム」。寡作だった画家の変遷をたどることができる。
ヨハネス・フェルメールの名前が注目されたのは1995年〜96年にワシントンとオランダのデン・ハーグで開かれた展覧会がきっかけだった。そのブームを受けて日本では2000年に大阪市立美術館で『フェルメールとその時代展』が開催。それ以来、フェルメールを一目見たい、という人は増えるばかりだ。

人気の理由の一つはその静けさだろう。彼の絵に登場するのは1人か2人、多くて3人だ。描かれている人物は手紙の読み書きをしたり、楽器の演奏を始めようとするなど、静的な動作が多く描かれる。乱痴気騒ぎやケンカ、大勢での踊りといった場面が描かれることはない。
ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》1658年-1660年頃 アムステルダム国立美術館Rijksmuseum. Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt, 1908 鈍くて冷たい光の中、メイドの服の黄色、青、赤が浮かび上がる。
ヨハネス・フェルメール《マルタとマリアの家のキリスト》1654-1655年頃 スコットランド・ナショナル・ギャラリー National Galleries of Scotland, Edinburgh. Presented by the sons of W A Coats in memory of their father 1927 マルタは忙しく給仕しているのに、マリアはキリストの話に聞き入っている。キリストはマリアを指して「マリアは良い方を選んだのだ」という。フェルメールは最初、物語画家(聖書や神話の物語を描く画家)を目指していたが、後に裕福な市民の間で人気があった風俗画へと方向を変えた。 
ヨハネス・フェルメール《ワイングラス》1661-1662年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Jörg P. Anders 日本初公開。黄色が好きなフェルメールだが、この絵では鮮やかな赤が目に飛び込む。 
ヨハネス・フェルメール《リュートを調弦する女》1662-1663年頃 メトロポリタン美術館 Lent by the Metropolitan Museum of Art, Bequest of Collis P. Huntington, 1900 (25.110.24). Image copyright © The Metropolitan Museum of Art.  Image source: Art Resource, NY 背景にある地図はオランダの勢力を示すもの。
ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの女》1662-1665年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Christoph Schmidt “鏡を見る若い女性”のイメージは一般に虚栄やうぬぼれを象徴するが、教訓めいたことがあまり感じられないのがフェルメールの絵の特徴だ。 
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》1665年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer, Jr., in memory of their father, Horace Havemeyer, 1962.10.1 この黄色いマントは出品されていない3作品にも描かれている。
ヨハネス・フェルメール《赤い帽子の娘》1665-1666年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 大きな帽子が特徴的。レンブラントもこのタイプの帽子をかぶる妻サスキアを描いている。※12月20日まで展示
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く婦人と召使い》1670-1671年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー Presented, Sir Alfred and Lady Beit, 1987 (Beit Collection) Photo © National Gallery of Ireland, Dublin NGI.4535 後ろの壁には旧約聖書の一場面「モーセの発見」の絵が掛けられている。 
ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》1658年-1660年頃 アムステルダム国立美術館Rijksmuseum. Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt, 1908 鈍くて冷たい光の中、メイドの服の黄色、青、赤が浮かび上がる。
ヨハネス・フェルメール《マルタとマリアの家のキリスト》1654-1655年頃 スコットランド・ナショナル・ギャラリー National Galleries of Scotland, Edinburgh. Presented by the sons of W A Coats in memory of their father 1927 マルタは忙しく給仕しているのに、マリアはキリストの話に聞き入っている。キリストはマリアを指して「マリアは良い方を選んだのだ」という。フェルメールは最初、物語画家(聖書や神話の物語を描く画家)を目指していたが、後に裕福な市民の間で人気があった風俗画へと方向を変えた。 
ヨハネス・フェルメール《ワイングラス》1661-1662年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Jörg P. Anders 日本初公開。黄色が好きなフェルメールだが、この絵では鮮やかな赤が目に飛び込む。 
ヨハネス・フェルメール《リュートを調弦する女》1662-1663年頃 メトロポリタン美術館 Lent by the Metropolitan Museum of Art, Bequest of Collis P. Huntington, 1900 (25.110.24).  Image copyright © The Metropolitan Museum of Art.  Image source: Art Resource, NY 背景にある地図はオランダの勢力を示すもの。
ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの女》1662-1665年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Christoph Schmidt “鏡を見る若い女性”のイメージは一般に虚栄やうぬぼれを象徴するが、教訓めいたことがあまり感じられないのがフェルメールの絵の特徴だ。 
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》1665年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer, Jr., in memory of their father, Horace Havemeyer, 1962.10.1 この黄色いマントは出品されていない3作品にも描かれている。
ヨハネス・フェルメール《赤い帽子の娘》1665-1666年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 大きな帽子が特徴的。レンブラントもこのタイプの帽子をかぶる妻サスキアを描いている。※12月20日まで展示
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く婦人と召使い》1670-1671年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー Presented, Sir Alfred and Lady Beit, 1987 (Beit Collection) Photo © National Gallery of Ireland, Dublin NGI.4535 後ろの壁には旧約聖書の一場面「モーセの発見」の絵が掛けられている。 
フェルメールの絵には余韻がある。描かれた人物は手紙の相手など、その絵の中にはいない人のことを想っているように見える。もの思いにふけるように見える人物もいる。表情も抑えめだから、登場人物は何を考えているのだろうか、どうしてそんな表情をしているのか、と見る者の想像力をかきたてるのだ。

彼が寡作だったことも、多くの人の興味をひきつける。わずか40年あまりの生涯に残した作品は35点とも言われる(研究者によって数に相違がある)。失われた作品を計算に入れても生涯に50点程度の絵画しか描かなかったのではないかと言われている。今回の「フェルメール展」のために来日した作品は全部で10点で、東京展ではそのうちの9点が展示され、うち2点が期間限定(大阪展は大阪でのみ展示される1点も含めて6点)。これまで開かれたフェルメールの展覧会でもなかなか見られなかった光景だ。
ヨハネス・フェルメール《マルタとマリアの家のキリスト》1654-1655年頃 スコットランド・ナショナル・ギャラリー National Galleries of Scotland, Edinburgh. Presented by the sons of W A Coats in memory of their father 1927 マルタは忙しく給仕しているのに、マリアはキリストの話に聞き入っている。キリストはマリアを指して「マリアは良い方を選んだのだ」という。フェルメールは最初、物語画家(聖書や神話の物語を描く画家)を目指していたが、後に裕福な市民の間で人気があった風俗画へと方向を変えた。 
フェルメール作品だけがずらっと並んでいるのを見ていくと、いろんなことがわかってくる。展示はおおむね年代順だ。最初期の《マルタとマリアの家のキリスト》は他の作品に比べるとなんとなくぼやっとして見える。服もパンも、パンを載せている籠も家の壁も似たようなタッチで描かれているのだ。ちょうど反対側の壁にかかっている《牛乳を注ぐ女》と比べるとその違いは一目瞭然だ。《牛乳を注ぐ女》のパンや籠は、それぞれの質感がしっかりと感じられる。