奈良美智の“30年の歩みをたどる展覧会”に行ってみませんか? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook line twitter

奈良美智の“30年の歩みをたどる展覧会”に行ってみませんか?

愛知県の〈豊田市美術館〉で、奈良美智の展覧会が開催中だ。『奈良美智 for better or worse』と題された展覧会には、1987年から2017年までの奈良の代表的作品100点が揃う。国内外で美術館や個人にコレクションされているこれだけの作品が一堂に会するのはこれが最後かもしれないと言われる本展。その見どころを4つのキーワードからお届けします。

(左から)《ブランキー》(2012年)、《夜まで待てない》(2012年)、《Dead of Night》(2016年)。 (c)Yoshitomo Nara photo_Keizou Kioku
1. なぜ1987年から始まるのか?

1987年、それは奈良が〈豊田市美術館〉近くの長久手市にある愛知県立芸術大学大学院を修了した年である。奈良は、生まれ故郷の青森県弘前市から武蔵野美術大学を1年で中退したのち愛知県立芸術大学へと進学すると、そのまま大学院へと進んだ。修了後、さらに1年この地に滞在すると、翌年日本を離れドイツへと旅立つ。1987年は、奈良がアーティストとしてのキャリアをスタートした年であり、本展では奈良がドイツへの旅費を捻出するために描いたドローイング(それらは奈良が教えていた予備校の生徒等が購入した)や、渡独前に友人にプレゼントし後日加筆した作品など、なかなか見ることができない貴重な初期作品も展示されている。
会場入って最初の部屋では、奈良の私物を展示。奥には渡独する以前の長久手時代に描いた作品が。 photo_Keizou Kioku
2. 展覧会の第一室で示される創作の源。

会場に入ってすぐ観客を迎えるのは、奈良の集めてきた本やレコードだ。一方の面には、奈良の作業部屋の棚を再現し、絵本や画集といった書籍から、こけしや人形、切り抜き写真まで奈良が子供の頃から大事にしていたものが置かれている。そしてもう一方の面には壁いっぱいに奈良が学生時代に集めたレコードジャケットが貼られている。その数は324枚。パンク好きで知られる奈良だが、ここに飾られているのはパンクに出会う以前に聞いていたロックやフォークのものだ。
奈良がパンクに出会う以前(1977年)に買い集めたレコードジャケットが壁一面に。 photo_Keisuke Fukamizu
「高校時代はラグビー部だった僕にとっての美術は、英語の音楽やレコードジャケットでした。それらが僕の先生で、そこから美術に入っていった。子供時代、米軍のラジオ放送で流れてくる音楽を聴きながら、訳のわからない英語の言葉を頭のなかで訳そうとしました。そうしたことで、僕の想像力は養われたと想います。僕はいわゆる“美術”を勉強してきた人間ではありません。美術は美大で習いましたが、自分の血になっているのは別のところにあって、それらが自分の個性をつくっていると思います」(奈良美智)

子供時代に読んだ絵本や中学・高校時代にバイト代や参考書代を使って買い集めたというレコードジャケット、それらが血となり肉となり、アーティスト奈良美智を作っている。