ART
東京の新しい景色を見つける芸術祭が開催中。
『カーサ ブルータス』2021年9月号より
August 8, 2021 | Art | a wall newspaper | text_Naoko Aono
普段は作品が展示されるような場所ではないところにアートが出現。見たことのない街の表情が見られます。
歴史的建造物や看板建築(ファサードにだけ装飾がある主に商店の建物)などを会場に開催中の国際芸術祭『東京ビエンナーレ2020/2021』。絵画や彫刻のほか、オンゴーイング(制作過程を鑑賞するもの)、AR、オンラインのプログラムも含め、多彩な作品が登場する。
会場となった場所には一つずつドラマがある。廃業してしまった額縁店「優美堂」は長らく空き家になっていたが、粘り強く交渉し、貸し出してもらえることになった。中村政人はここで残されていた額縁と複製画をモチーフに作品を制作する。「海老原商店」は江戸時代から衣類を扱ってきた店舗。西尾美也はそこで服にまつわる作品やワークショップを行う。AR三兄弟がアーティストとコラボレーションしたAR作品では神田にかつてあった山が再現されたり、ビルの谷間に仏像が落ちてきたりと、歴史と虚構を行き来する感覚が楽しめる。
会場はかなり広いエリアに点在しており、全部で約50か所になる。余裕があれば数日かけてゆっくりと巡りたい。途中で古い建物や見慣れた橋などの意外な姿を発見することも。「見なれぬ景色へ」のテーマ通り、東京の街の知らなかった顔が見えてくる。
『東京ビエンナーレ2020/2021 見なれぬ景色へ』
アーティストの中村政人とクリエイティブディレクターの小池一子が共同代表を務める国際芸術祭。千代田区、中央区、文京区、台東区の施設や公共空間。〜9月5日。パスポート2,500円。個別鑑賞券(500円)も。開始日、時間、休日は会場により異なる。