トム・サックスを直撃! 伊勢丹新宿店で展覧会ってホント? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

トム・サックスを直撃! 伊勢丹新宿店で展覧会ってホント?

9月29日から始まるトム・サックスの展覧会は、その名もリテール・エクスペリエンス(店舗体験)。今なぜ買い物をテーマに? なぜ伊勢丹で? トムに話を聞きました。

〈伊勢丹新宿店〉で先行発売される、トム・サックスの新作チェア。これは「僕らバージョンのイームズチェア〈LCW〉」とトムが呼ぶ《Shop Lounge Chair》。 ©Tom Sachs
《Shop Chair》 ©Tom Sachs

《Shop Chair》 ©Tom Sachs
《Shop Chair》「この黄色バージョンは日本限定なんだよ」とトム。 ©Tom Sachs
《Shop Chair》 ©Tom Sachs
トム・サックスといえば、2016年、ソーホーのスタジオの入り口に「キオスク」を設置し、そこで実際に営業していた時期がある。〈ボデガ245〉と名付けたその狭いスペースではコーヒーや乾物、タバコを販売し、彼ら独自のパスポートも手数料20ドルで発行した。パスポートに貼る証明写真も、スタジオのスタッフがその場で撮影・プリントしてくれる。「買い物」という行為を通じてトム・サックスのプロジェクトに参加できる! と世界中のファンが駆けつけるかと思えば、ご近所さんがガムやタバコを普通に買いに来るというオチまでついた、愉快な試みだ。

その後、〈ブルックリン美術館〉にも「出店」した大人の「お店ごっこ」プロジェクトがいよいよ日本上陸……? いや、〈伊勢丹新宿店〉「ISETAN THE SPACE」での『トム・サックス:店舗体験』展では、スケールといい内容といい、NYとは別次元の「店舗体験」が待ち構えているという。
こちらも伊勢丹先行発売の《Side Table》。
《Coffee Table》 ©Tom Sachs

立体造形アーティスト、トムにとって「小売りの体験」を総合的にデザインする展覧会は、この『トム・サックス:店舗体験』展が初めてだ。会場全体をデザインし、これまで手がけたアート作品や新作ファニチャーの数々を展示し、11点ものウィンドウディスプレイを制作する。しかもプロダクツの販売も行うとは! 

ーそもそも、今回なぜ「店舗体験」をテーマに?

僕にとって、店に行く体験は、美術館を訪れるのと同じこと。キオスクでも百貨店でも、ガソリンスタンドでも変わらない。見せ方、人の心のつかみ方、情報の伝え方。店も美術館も向き合う課題は同じだし、消費という面でも通じ合う。買い物目的で美術館に行く人はあまりいないが、金を払って中に入り、アーティストの発想や考えを「購入」する。モノこそ所有しないものの、これぞ「消費」に他ならない。小売りに対し、僕は多大な敬意を抱いている。だからこそ「店舗体験」という展覧会を作ろうと思ったんだ。

ーコロナの影響で、実店舗と人との関わり方は根底から覆されました。本展のタイミングにも感慨深いものがあります。

僕もみんなと同様、買い物のほとんどがオンラインだ。店になかなか行けないのは残念でならない。ちなみにこの展覧会はかなり前から進めていた。つまり今のご時世を反映した企画ではなく、開催がたまたまこの時期になったというわけさ。むしろ展覧会に、世界の方から「ついてきた」感を覚えるね。
《Boombox Card Deck》カセットテープ? いえいえ、トランプカードです。 ©Tom Sachs
《Boombox Card Deck》トムのラジカセ作品を絵柄にあしらってある。 ©Tom Sachs
《Casio Ceramic Pocket Watch》カシオウォッチを内蔵した懐中時計。 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery
《Casio Ceramic Pocket Watch》 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery
ー本展の目玉のひとつが、ウィンドウ・ディスプレイです。貴方のキャリアは、今はなき〈バーニーズNY〉のウィンドウ・ディスプレイから始まりましたね。

そう、まわりの連中が大学院に進むのを横目に僕だけ〈バーニーズ〉で4年間、ウィンドウ・ディスプレイに携わった。僕にとっての大学院だ(笑)。〈バーニーズ〉のウィンドウ・ディスプレイ制作では、人生で出会った中でもっとも手厳しくて知性が高く、こだわりの強い、ずば抜けて賢い人々と仕事をする機会に恵まれた。ウィンドウ・ディスプレイはジオラマや3Dペインティングのようなもの。空間や照明、陰影や心を惹きつける魅力といった、アートに必要な要素すべてがこの小さなタブローの中に要求される。そして数週間だけ人目に触れたのち、跡形もなく消え去ってしまう。

『トム・サックス:店舗体験』展のウィンドウをのぞき込めば、本展のほぼ全容が伝わるだろう。壁は白やナチュラル、ブラックに塗った合板とネジ。まるでトム・サックス・スタジオの中にいるかのようだ。2階の展示会場に進むと、さらにサプライズが待っているんだよ。

ちなみに写真ではまったく魅力が伝わらないのがウィンドウ・ディスプレイという代物だ。彫刻も写真では伝わらないが、それ以下といっていい。ことウィンドウ・ディスプレイに関しては、実物を体験しないとダメなんだ。

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