時代を更新するアーティスト、オラファー・エリアソンの世界を回顧展で。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

時代を更新するアーティスト、オラファー・エリアソンの世界を回顧展で。

方法や場所という枠に捉われず、様々なアプローチやフィールドでアート作品を生み出し続ける、オラファー・エリアソン。国連から気候変動に対するプロジェクトの大使にも任命され、今もっとも世界から注目を集めるアーティストのひとりである彼の、最新作を含む大回顧展がスペインの〈ビルバオ・グッゲンハイム美術館〉にて開催中です。

《Your uncertain shadow (colour)》 © 2010 Olafur Eliasson  5つのスポット照明が床に置かれた部屋に入ると、自分の身体のかたちが多色の影となって壁面に投影されるインタラクティヴな作品。
ビルバオのグッゲンハイム美術館にて、アイスランド系デンマーク人アーティスト、オラファー・エリアソンの『In Real Life(現実世界の中で)』展が開催中だ。1967年生まれの彼は1990年代初頭から創作活動をはじめ、ロンドンの〈テート・モダン〉の室内壁面に製作した巨大な太陽を用いて霧を発生させた《ウェザー・プロジェクト》や、電気供給のない場所に住む人々のために太陽光発電ランプをつくり、それを先進国の人々への販売を通じて届ける仕組みごとデザインした《リトル・サン・プロジェクト》などで知られる。取り扱う主題、作品の作り方やスケール、フォーマットなど、さまざまな意味で「アートを超えるアーティスト」としてまたたく間に世界的に認知されるようになり、昨年2019年9月には国連開発計画(UNDP)から、「気候変動に対して持続可能な開発を目指す(SDGs)親善大使」にも任命された彼の、新作を含む回顧展である。
オラファー・エリアソン。 photo_Runa Maya Mørk Huber / Studio Olafur Eliasson © 2017 Olafur Eliasson
現在ベルリンに構えるスタジオには、アーティストのほか、科学者や建築家、企業家、政治家、ダンサーや手工芸家、料理人など多分野の専門家たちがメンバーとして集い、アート作品やインスタレーションの制作だけでなく、より大きな意味でのプロダクションや研究を多数同時並行して進めている。そう聞くと彼の作品に対して難解なイメージを覚えるかもしれないが、オラファー・エリアソンの作品を鑑賞するのに、特別な専門知識や高度な読解力は必要ない。たとえ小さな子供であっても、そこに置かれた彼の作品を、自分の目と身体、さらに身体の動きを通して真摯に感じ受け止めることで、「ここにいるわたし」の大切さ、尊さを知覚できる。それこそが、エリアソン作品の最も大きな魅力と言って良い。

環境問題、社会的な格差、エネルギーの枯渇などより世界的、社会的な問題に関心を向けているエリアソンは、それらに対する憂慮の念を世界中の一人ひとりの「わたし」たちと共有し、体感するための作品をつくり続ける。本展では暗い空間の中に掴みどころのない霧と虹が立ち現れる《ビューティー》の他、美術館の隣に高さ11メートルの「滝」が設置される予定だという。この「滝」はシドニー(1998年)、ニューヨーク(2008年)、サン・パウロ(2011年)、ヴェルサイユ(2016年)に続くシリーズの最新作で、ビルバオという都市空間の只中に、人々をその景観と音、水しぶきで圧倒させる「人工的な大自然」が建設され、「現象」としての自然を体感し、自然環境へ想いを馳せるための装置となっている。
《Beauty》© 1993 Olafur Eliasson 闇、スポット照明、水からなる気象現象的な作品。霧と、角度によって虹が見える。
展示される30作品のうち、もうひとつ特筆すべき作品は、2015年に他界したアイスランド人アーティストで数学者、建築家でもあったエイナー・トーステイン(1942-2015)との共同作品である《Model Room》だ。レゴや紙、スポンジやゴム、金属など様々な素材を用いてつくられた450個にもおよぶ模型群には、オラファー作品の特徴がいくつも見て取れる。関わる専門家の多様性、執拗で圧倒的なまでの仕事量・追求性、そして作品名が《Model Room》であることからも分かるように、オブジェ、部屋、ドーム、建築、惑星などあらゆるものに応用できる可能性を感じられるという豊かな想像力。

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます