2021年プリツカー賞決定! 決め手は“壊さない”でした。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

2021年プリツカー賞決定! 決め手は“壊さない”でした。

『カーサ ブルータス』2021年6月号より

解体・移動せず、付け加えたり、形を変える。今わかるラカトン&ヴァッサルのトランスフォーメーション建築の凄さ。

Grand Parc(2017)
1960年代に建てられたボルドーの都市型公営住宅〈グラン・パルク〉530戸を再設計。既存構造の外部にガラス扉で開閉するテラスを設け、リビングと繋げて居住面積を拡大。
(1960年代)
(2017年)
建築界の最高栄誉と言われるプリツカー賞、今年はフランスのラカトン&ヴァッサルが受賞した。彼らの基本は、既存建築を壊さず移動せずに、付け加えたり、形を変えるトランスフォーメーション(変換)の設計哲学だ。

「トランスフォーメーションは、既存のものをより良くする機会です。解体は、容易で短期的な決断。エネルギーや材料、歴史が失われ、社会的にネガティブな影響を与えます。私たちにとってそれは暴力行為です」とラカトン。

“取り壊さない” 理念に基づき、建物の永続的な特性を残しながらインフラを改善していく控えめな介入は、今でこそエシカルな社会意識の高まりとともに評価される。が、彼らにとっては今に始まったことではない。ヴァッサルが一時的にナイジェリアに移った1980年代、ラカトンもたびたび彼を訪ねていた。そこで彼らは現地の極めて限られた資源で暮らす人々の姿と、相対する砂漠の美しさから、建築的に多くを学んだのだという。
Latapie House(1993)
フランス、フロワラックにある初期の代表作。温室を既存建築の外側に設け、生活空間を安価かつ飛躍的に拡大。自然と触れ合いながらエネルギーの節約や空調管理が容易にできる。
Palais de Tokyo(2012)
パリ16区にある美術館。1937年建造の建物を改築し2002年に開館した。その10年後、地下などに2万平米を増築。ボリュームのある可動性を備えた空間はあらゆる媒体のアートに対応。
FRAC Nord-Pas de Calais(2013)
フランス、ダンケルクの現代アートの複合文化施設。既存の戦後の造船所の構造を取り壊さず、透過性のあるプレハブ建材を使いほぼ同一の建物を隣に追加し、繋げる設計を提案。
その後、パリを拠点に〈ラカトン&ヴァッサル〉として多くの集合住宅や学術施設、公共空間を手がけてきた。それらの多くは温室やテラスを設けることで、居住空間の拡大や自然に触れる心地よい環境、エネルギーの節約を実現している。初期の代表作〈ラタピ邸〉ではポリカーボネートの格納式パネルを邸宅の裏に追加し、美しい光と透明性、自然換気と日射遮断を両立させた。住空間の拡大のみならず、内外を繋ぐ心地よい環境を建築に取り入れたのだ。

「優れた建築はオープンで、住む人の自由を広げる。建築の意図を示唆したり強制せず、生活を静かにサポートし、親しみやすく、使いやすく、美しいものでなくてはならない」と2人は考える。

今年のプリツカー賞審査委員長であるアレハンドロ・アラベナは、「今年はこれまで以上に私たちが人類全体の一部だと実感した。環境や人類に公平であることは、次の世代に公平であることなのです」と2人の受賞を讃える。
アンヌ・ラカトン(右)、ジャン=フィリップ・ヴァッサル(左) 仏ボルドーの学生時代に知り合い、1987年パリで〈ラカトン&ヴァッサル〉設立。以来34年間、欧州と西アフリカを中心に30以上の設計を手がけてきた。
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