吉田実香のNY通信|噂の〈ザ・シェッド〉ついに幕を開けました。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

吉田実香のNY通信|噂の〈ザ・シェッド〉ついに幕を開けました。

ハドソンヤードに誕生した〈ザ・シェッド〉。ディラー&スコフィディオが設計した、かつてないほど「柔軟」なパフォーミングアーツ・ホールです。

30丁目側から望む〈ザ・シェッド〉。手前にはハイラインが。 photo_ Iwan Baan
photo_Timothy Schenck. courtesy The Shed
30丁目側から望む〈ザ・シェッド〉。手前にはハイラインが。 photo_ Iwan Baan
photo_Timothy Schenck. courtesy The Shed
「動くコンサートホール!?」 建設中から話題を呼んでいた〈ザ・シェッド〉が、ついに完成した。一見、風船でくるんだ格納庫にも見えるこの建物、ロケーションはハイラインの北の端。コンサートやダンス、演劇にインスタレーションと様々なプログラムに対応する多目的ホールが、ハイラインのいわば「終着点」に出現したのである。

設計はディラー&スコフィディオ+レンフロ。地上8階建てで、2・4階がギャラリ-、6階はシアター、最上階にイベントスペースを備えている。メインとなるのは半屋外の可動式スペース〈ザ・マッコート〉。着席で1,250名、オールスタンディングで最高3,000名まで収容可能のコンサートホールになり、ダンスパフォーマンスの場としても、また37mという高さをフルに活かしたアート作品のインスタレーション会場としても活用できる。〈ザ・マッコート〉の主な構造は、スチールフレームを高機能フッ素樹脂ETFEでくるんだ「ムーバブル(動く)・シェル」。このシェルを大小6個のクレーン用走行車輪が下で支え、全体をスライドできるというのが最大の特長だ。シェルを建物の中に適宜スライド収納させることにより、催されるプログラムに合った規模や形の空間をその都度つくり出せるのである。
ザ・マッコート。壁や天井が「シェル」だ。このように外光を遮ったり、覆いを外して自然光を入れたりと自由自在。 photo_Timothy Schenck
直径およそ1.8mの走行車輪が「シェル」をスライドさせる。レールの長さは83mほど。 Courtesy Diller Scofidio + Renfro
ザ・マッコート。壁や天井が「シェル」だ。このように外光を遮ったり、覆いを外して自然光を入れたりと自由自在。 photo_Timothy Schenck
直径およそ1.8mの走行車輪が「シェル」をスライドさせる。レールの長さは83mほど。 Courtesy Diller Scofidio + Renfro
車輪の最高速度は時速400m。収納したシェルを完全に開ききるまでの所要時間はわずか5分。夏になればシェルを建物内に仕舞い込み、むきだしになった1,860平米の土地をパブリックな屋外パビリオンとして、一般市民に楽しんでもらうというアイデアも。しかもその際、収納したシェルの外壁をスクリーンにして映像を映し出すというから面白い。中と外とがシームレスに入れ替わるのである。

工業港で用いられる移動式クレーンから発展したと言われる〈ザ・シェッド〉。機能が構造になった、飾りのないこの建物をDS+Rのエリザベス・ディラーは「All muscle, no fat」すなわち「体脂肪率ゼロの建築」と語った。

今回DS+Rと協働したのがデヴィッド・ロックウェル。レストランやホテル、ミュージアムやオフィスビルで知られる以外にも、ミュージカルやアカデミー賞授賞式のセットデザインでも長年活躍してきた建築家だ。地元NYのハイラインや文化の殿堂リンカーン・センター増改築を手がけてきたDS+Rと、ステージやパフォーマンスアーツの第一人者であるロックウェルが設計した最新文化施設。そのプログラムを少し覗いてみよう。

〈ザ・マッコート〉のこけら落としは『Soundtrack of America』。17世紀から現在に至るアメリカ黒人音楽の軌跡と、世界の文化に与えたインパクトを綴った舞台だ。監督はイギリス人映画監督スティーヴ・マックイーン(『それでも夜は明ける』ほか)。