【栃木・日光】甲斐みのりがめぐる、近代建築再発見の旅|TRIP BASE STYLE presents | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【栃木・日光】甲斐みのりがめぐる、近代建築再発見の旅|TRIP BASE STYLE presents

首都圏からも行きやすい観光地として名高い日光。この地には近代建築のルーツの一端を担う建物の数々が、今でも大切に残されているのをご存知ですか? アントニン・レーモンドが手がけた〈イタリア大使館別荘〉から〈東武ワールドスクウェア〉まで、この地で見るべき建築スポットと当地の美味しいものを、新たな日光の拠点〈フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木日光〉に泊まりながら、文筆家・甲斐みのりさんがじっくり紹介していきます。

●貴重なレーモンド建築〈イタリア大使館別荘〉

中禅寺湖側から眺める〈イタリア大使館別荘〉本邸。外装は竣工当時の写真を参考に日光杉の皮とこけら板の市松張りを復元。屋根は改修前にこけら葺きから銅板葺きに改修されていたが、現在も管理上の都合で金属板葺きに。
書斎側の暖炉の外側は石積みに。周囲の自然環境と調和するように地元の自然の素材をふんだんに使用。もう一つ食堂にも暖炉が備え付けられている。
内装・外装ともに、網代、亀甲、市松、矢羽など、さまざまな模様の杉皮を張り巡らせ割竹張りで押さえる工法。
日本が欧米諸国との外交や商業条約を頻繁におこなうようになった19世紀半ば、東京の蒸し暑さに耐えかねた各国の外交官から注目を集めたのが、神仏習合の聖地として発展してきた歴史を持つ日光。

冬は寒さが厳しい一方、夏は涼しく過ごしやすく、徳川家康が祀られる東照宮の周辺とともに、男体山と中禅寺湖が美しい風景を織りなす奥日光の中禅寺湖畔には、イギリス、ベルギー、フランス、トルコ、スイスなどの大使館別荘が建てられ、国際的避暑地として繁栄した。それにともない、日本の皇族や政府関係者も日光・奥日光を訪れるように。当時は「夏の間は日本の外務省が日光に移動する」と言われるほどだった。
建物の1階は、食堂、居間、書斎が壁なしでつながる広いワンルーム。どのスペースも中禅寺湖を目の前に臨む広縁につながる。写真は書斎部分。
食堂には樽を加工したワインセラーが。家具や調度品は竣工当時から受け継いできたもの。歴代大使が選ぶ1950年代のコレクションも飾られている。
建物の2階は湖に面して寝室が並ぶ。主に子ども部屋として利用されていたこの部屋は、改修時に杉皮張りから栃木県産材のさわらに変更された。
大使の寝室として利用されていた2階の眺望室。大使たちは窓からの眺めを、故郷のコモ湖と重ねていたという。家具やカーテンなどのインテリアは1997(平成9)年まで実際に使用されていたもの。
まずは、当時の姿のままで一般公開されている〈イタリア大使館別荘〉本邸へと赴いた。1928(昭和3)年から1997(平成9)年まで歴代大使とその家族が夏の数ヶ月を過ごしたといわれる建物だ。

設計を手がけたのは、師匠であるフランク・ロイド・ライトとともに、帝国ホテル建築のために来日し、外交官の職も兼務していたチェコ出身の建築家、アントニン・レーモンド。

これまで私は、日本の風土や文化を理解しながら、教会や学校、個人の邸宅まで、ロマンチックでストーリーのあるあらゆる建築を手がけ、日本の近代建築に貢献したレーモンドを殊に敬愛してきたが、建築そのものが地域の物語として中禅寺湖畔に端正に佇むその姿にさらなる感慨を抱いた。

日本の民家に興味を抱いていたレーモンドは、日本式の別荘の特徴でもあった杉皮張りを室内外に取り入れ、建物と周囲の景観との調和を図った。一方、家具や調度品、食器などはイタリア製を揃えることで、大使一家にとっては母国を思いより寛げる空間に、来客者にはイタリアの伝統を感じられる場所となった。

その後、1998(平成10)年に栃木県が建物を取得し、建物自体を展示物として公開活用するため、いったん建物を解体する大規模な改修が行われているが、改修時もレーモンド設計事務所が設計を担当することで、竣工時の面影がそのまま残された。
森の木々に取り囲まれた副邸〈国際避暑地歴史館〉。窓から四季の風景が楽しめる。
本邸がモダンな外観であるのに対して、平家造りの副邸〈国際避暑地歴史館〉はより日本家屋に近い印象。杉や竹の素材だけでなく、大工や職人も地元の人たちが携わっていた。
〈国際避暑地歴史館〉では、杉皮を割り竹で押さえた外装をより間近に感じられる。
本邸は1998(平成10)年の改修・復元で建築素材は一新しているが、副邸〈国際避暑地歴史館〉の一室には唯一、創建当時の杉皮張りが残されている。
〈イタリア大使館別荘〉一帯は、〈イタリア大使館別荘記念公園〉として整備され、敷地内には本邸と隣接して、大使の使用人が宿泊していた副邸も残る。暖炉のある居間兼食堂、広縁、寝室と台所からなるその建物もアントニン・レーモンドの設計。中禅寺湖周辺が国際的避暑地として発展してきた歴史を写真パネルで伝える〈国際避暑地歴史館〉として活用されている。
往時は目の前の湖で各国の大使が参加するヨットレースが開催され、別荘の行き来や買い物にもヨットやボートが利用されていたという。本邸前の桟橋に立ち、この地が避暑地として賑わった古きよき時代を思いながら湖を囲む山並みを眺めた。

〈イタリア大使館別荘記念公園〉〈国際避暑地歴史館〉

栃木県日光市中宮祠2482。9時〜17時(5月~11月10日。4月と11月11日~11月30日は16時まで)。5月~11月は無休。4月は月曜休。12月〜3月は休館。入館料:大人200円(イギリス大使館共通券 300円)。

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