藤原ヒロシが巡る、ジョージアのビックリ建築とファッション。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

藤原ヒロシが巡る、ジョージアのビックリ建築とファッション。

ジョージア(旧グルジア)の首都トビリシで行われているトビリシ・ファッションウィーク。メルセデス・ベンツがスポンサーの同イベントに藤原ヒロシがゲストとして招待されたのは2018年秋のこと。その滞在をきっかけにトビリシという街、ジョージアという国に一気に興味を持った彼に同行して、その魅力を案内してもらうことになった。

●ユニークな建築と歴史的背景

市の中心、リカ公園へとつながる〈ピース・ブリッジ〉(The Bridge of Peace
The Bridge of Peace, Tbilisi)。
「トビリシには旧ソ連時代の共産的な雰囲気の建物もまだ残っている。そんな中に突然現代的なデザインの建築が建っていたりしてカオスな印象があります。街の真ん中には〈ピース・ブリッジ〉という歩行者専用の橋がかかっていてランドマークのようになっています」(藤原ヒロシ)

そんなさまざまな建築が乱立している背景を知るには、そもそもこの国の歴史をさかのぼってみる必要がありそうだ。特異な立地、かつ民族や宗教が交錯する要所にあるがゆえ、この国は幾多の侵略と攻防を繰り返してきた。ペルシア、モンゴル、オスマントルコ、ロシア、ソ連などの強国に吸収されながらも、国教であるキリスト教と独自の文字を持つグルジア語を頑なに守り続けた。

1991年のソ連崩壊によってグルジアとしてようやく独立を果たした後も、共産主義的な旧体制からなかなか脱却できない状況が続く。そんな中、真の民主化と近代化を掲げて立ち上がったのはジョージア第3代大統領のミハエル・サーカシヴィリ。2003年の無血の「バラ革命」を経て翌年に大統領に選出されたサーカシヴィリは、ロシアの影響下から脱却し、EUに加盟してヨーロッパの一部となることを目指すなど、大胆な改革を推し進めた。そして「近代化にはクレイジーで大胆な建築が必要」という持論から、イタリアやドイツの建築家によるユニークなデザインの公共建築が各地に出没することになったのだという。
完成したまま、いまだ使われていない巨大な音楽ホール(Rike Concert Hall
Rhike Park, Tbilisi)。
市の中心を流れるクラ川を挟んで、旧市街と大統領府のある丘のふもとに広がる公共の公園を結ぶ〈ピース・ブリッジ〉はミケーレ・デ・ルッキのデザインにより2010年に完成した。ガラスの屋根で覆われた歩行者専用のこの橋は街のランドマークとしての存在感もあり、LEDをふんだんに使った夜のイルミネーションも観光客の目を惹いている。

その公園の奥に横たわっているのはホーンを連ねたような目を引くデザインのミュージック・ホール〈Rike Concert Hall〉。すぐそばにあるキノコの傘を重ねたような屋根で目を惹く市の合同庁舎と同じく、マッシミリアーノ・フクサスのデザインによるもの。驚いたのは、こちらのミュージック・ホール、すでに完成しているものの実際にはこれまで一度も使われないまま放置されているということだ。このミュージック・ホールに限らず、トビリシ市内から郊外にかけて、使われていない建築物をいくつか目にする。
市の合同庁舎も目を引くデザイン。(Public Service Hall
2 Zviad Gamsakhurdia Named Right Bank, Tbilisi)
郊外にあるジョージア銀行 キャッシュセンター(National Bank of Georgia Cash Center
Kakheti Highway, Tbilisi)。
市の合同庁舎も目を引くデザイン。(Public Service Hall 2 Zviad Gamsakhurdia Named Right Bank, Tbilisi)
郊外にあるジョージア銀行 キャッシュセンター(National Bank of Georgia Cash Center Kakheti Highway, Tbilisi)。
空港の敷地内にあるビル、レンタカーの受付になっている。
完成したまま使われることなく放置されたビルは郊外にもある。
空港の敷地内にあるビル、レンタカーの受付になっている。
完成したまま使われることなく放置されたビルは郊外にもある。
革命後、大統領就任当時には大いに支持されたサーカシヴィリだが、2008年にはロシアとのいわゆるグルジア紛争が勃発。2012年には親ロシアのビジナ・イワニシュビリが首相となり、進めてきた革新的な政策の反動で失脚することとなる。サーカシヴィリと方向性の異なる新政府は旧政府の作った建築物の使用を拒み、あるいは建築途中だったものはそのまま工事が頓挫し、それらの建築物がそのままの姿で放置されているということだ。実際に市民の声を聞いてみると、前大統領を支持していた人と、現政府を支持している人の割合は半々といった具合で、使われることもなく、壊されることもない大きな建築物が放置されたままのこの現状には複雑な心境のようだ。
大統領府のある丘の上から市内の夜景を見下ろす。