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BIRDS IN PARADISE
鳥とジュエリーの
ファンタジックな物語。

サイエンスとアートの
狭間を楽しむ展示

創作のモチーフとしてジュエラーの創造性と技術を刺激し続けてきた「鳥」。両者の関係性をジュエリーと剥製、博物図譜などを通じて見つめる展覧会『極楽鳥』が〈インターメディアテク〉にてスタートした。

学術的な探求が
ジュエリーデザインに
どう影響を及ぼしたか

フランスのハイジュエラー、ヴァン クリーフ&アーペルの支援により開校した「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」と東京大学総合研究博物館が共同で開催する展覧会『極楽鳥』。宝飾品と鳥の剥製標本や図譜などを見比べながら鑑賞することで、鳥の造形が宝飾芸術にどのように表象されてきたかを読み解く展覧会だ。
「空を飛び交い、色鮮やかで、様々な意匠をまとい、魅惑的にさえずる鳥は、人間にとってはあらゆる生物種の中でこの世のもの以上の特別な存在だったといえます」(大澤啓/キュレーター、東京大学総合研究博物館特任研究員)。だからこそ鳥の姿はジュエリーデザインに頻繁に取り入れられた。

貴重な鳥の剥製45点も見どころ。
東京大学総合研究博物館と山階鳥類研究所から集められた鳥の剥製にも注目したい。見る角度によってオーロラのように変化する羽の色やグラフィカルな模様など、自然の造形には驚嘆するばかり。360度どこからでも見られるケースだから鳥の後ろ姿まで観察できる。

昼の鳥の躍動感、飛翔する姿を写す。
手前には1920年代にツバメをモチーフにして製作された宝飾品が並ぶ。ひと目でそれとわかる特徴、二股の尾羽や翼を広げた姿が強調されている。壁面展示の19世紀の博物図譜や写生本は未知の鳥の存在を知らせ、鳥の姿への認識を固定させることにもなった。

夜の鳥、フクロウが象徴するもの。
会場は夜の森を演出した部屋から始まる。ヴンダーカンマー(驚異の部屋)を彷彿させる陳列棚に浮かび上がるのはフクロウの剥製標本。ケースの中には大きなスモーキークォーツに精緻な彫刻を施してフクロウの顔を表したペンダント(1860年頃製作)が展示される。

驚異の部屋に迷い込んだような会場演出。
19世紀ヨーロッパの貴族の間で流行したヴンダーカンマー(驚異の部屋)は、世界中の珍奇な動植物や鉱物を収集して並べた陳列棚のこと。ジュエリーはウッディーな展示ケースに入れられ、鳥類図譜はタブローのように展示された。剥製を入れたガラスケースは360度どこからでも見ることができ、後ろ姿まで詳細に観察できる。

会場は「夜の鳥」「朝の鳥」「昼の鳥」「ファンタジーの鳥」と章立てされ、主に19世紀半ばから20世紀半ばに製作されたジュエリーと、剥製や図譜の間を自由に行き来して鑑賞することができる。フクロウ、クジャク、ツバメ、ハチドリ、フラミンゴ……羽の色彩や飛翔する姿、羽毛の柔らかさをどのように硬い貴石や金属で表現するか、その発想と技巧にため息が出る。と同時に、創作の源泉であった自然の生物そのものが、人知を超えた驚異の美しさを備えていることにも気づかされる。
「ハチドリをモチーフにしたと明らかにわかるジュエリーがある一方で、どの鳥を写したのか特定できないものがほとんどでした。綺麗な色、長いくちばし、尻尾など、魅力的なパーツを組み合わせてジュエリーに仕立てたのでしょう」(松原始/キュレーター、東京大学総合研究博物館特任准教授)

伝説と想像力から生まれたジュエリー、
意匠化されたデザイン

ジュエリーデザインに頻出する鳥、クジャク
扇のように広がる長い羽、鳥の目を思わせるグラフィックな文様、見る角度によって紫や緑や青へと変化する色。クジャクほどジュエラーの想像力をかき立てた鳥はないだろう。1867年のパリ万博では、ギュスターヴ・ボーグラン[1832-1870]によるクジャクのブローチが話題を集めた。写実的ながらオリエンタリズムの影響も見てとれる。

世にも珍しい鳥と伝えられた極楽鳥。
約45種存在すると言われる極楽鳥(フウチョウ)は主にニューギニアなど熱帯に生息している。繁殖期になるとオスは飛ぶための翼の下にフサフサとした飾り羽を生やし、それを大きく広げてダンスしてメスを誘惑する。20世紀初頭ヨーロッパでこの羽は帽子の装飾として人気があり、莫大な数のフウチョウが乱獲された。

昼の鳥の躍動感、飛翔する姿を写す。
手前には1920年代にツバメをモチーフにして製作された宝飾品が並ぶ。ひと目でそれとわかる特徴、二股の尾羽や翼を広げた姿が強調されている。壁面展示の19世紀の博物図譜や写生本は未知の鳥の存在を知らせ、鳥の姿への認識を固定させることにもなった。

精緻な博物図譜や鳥類写生図も見どころ。
ジェームズ・ラフォレスト・オーデュボン[1785-1851]による『アメリカの鳥類』(1838年)は鳥類写生画の一つの到達点と言える。生息地に赴いて実物を観察し、手彩色版画で原寸大の鳥の姿を表している。一方、日本でも幕末から明治にかけて河辺華挙[1834-1928]の『鳥類写生図』や毛利梅園[1798-1851]の『梅園禽譜』などがある。

伝説と想像力から生まれたジュエリー、意匠化されたデザイン

極楽鳥(フウチョウ)はまさに人間の想像力をかき立てた。飛ぶための翼のほかに求愛のための飾り羽が顕著に発達した世にも珍しい姿は、近代以前は逸話とないまぜになって伝えられた。その剥製が間近に見られるのも本展の見どころの一つになっている。
また20世紀に活躍したデザイナー、ピエール・ステルレの作品にも注目したい。航空力学にも詳しかった彼は大きな貴石を鳥の胴体に見立て、羽ばたきや翼がひるがえるさまを彫金で写し、エンジェルヘアーと呼ばれる細編みゴールドのフリンジで鳥毛の揺れを表現した。ある種、抽象彫刻のような様式化されたジュエリーを生み出したのだ。人為的にポーズをつけた剥製も宝飾品も実物の鳥をモデル化したものだが、そこに媒介した絵画の存在も重要で、写生本や博物図譜が果たした役割についても理解を深めることができる。

Birds of fantasy イマジネーションが
生んだ鳥

極楽鳥のエグレット
作者未詳/1880年頃/ゴールド、シルバー、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、エナメル/個人蔵
協力:アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート
© アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート

ヴァン クリーフ&アーペル
鳥のブローチ
1920年代/プラチナ、ダイヤモンド、エメラルド、オニキス、鳥の羽/個人蔵
© Benjamin Chelly

モーブッサン
極楽鳥のブローチ
1960年代/イエローゴールド、サファイア、エメラルド、ターコイズ、ダイヤモンド、ルビー/個人蔵
© Benjamin Chelly

コフウチョウ
年代未詳/剥製標本/山階鳥類研究所所蔵/東京大学総合研究博物館寄託
© UMUT

梅園毛利元寿
『梅園禽譜』写本より
「オオフウチョウ」
明治10年(1877)/和紙に彩色/折帖/東京大学総合研究博物館研究部所蔵
© UMUT

Birds of fantasy イマジネーションが
生んだ鳥

極楽鳥(フウチョウ)はとりわけ人間の興味を惹きつけた。大航海時代に初めて発見されて以来、梱包に邪魔な足を切られた状態でヨーロッパに届けられたので、地上に降りることなく飛び続ける不思議な鳥として長らく認識されていた。虚実が入り混じった鳥の姿は、イメージデザインのインスピレーションの源泉となった。

Vibrant birds 躍動感あふれる鳥

エキゾチックな鳥のブローチ
作者未詳/1880年頃/トランブラン仕掛け、金に銀、ダイヤモンド/個人蔵
© Benjamin Chelly

伝メゾン・ルヴナ 鳥の帽子ピン
1870年頃/ゴールド、シルバー、ルビー、ダイヤモンド、エメラルド/個人蔵
© Benjamin Chelly

ハチドリ類ジオラマ
年代未詳/剥製標本/山階鳥類研究所所蔵/東京大学総合研究博物館寄託
© UMUT

ヴァン クリーフ&アーペル
ツバメのブローチ
1928年/プラチナ、オニキス、ダイヤモンド/ヴァン クリーフ&アーペル所蔵
© Benjamin Chelly

ジョン・ジェームス・ラフォレスト・オーデュボン
『アメリカ産鳥類図譜』(複製)より
「アオカケス」
1830-1839年/私家版/ロンドン(英国)/紙に多彩色石版/東京大学総合研究博物館研究部所蔵
協力:アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート
© UMUT

Vibrant birds 躍動感あふれる鳥

毎秒数十回も羽ばたきして空中にとどまるハチドリ。空を切り裂くように飛翔するツバメ。小さな体に秘められた躍動感をジュエリーに取り込むために様々な工夫がなされた。たとえばラケットハチドリの尾羽が震えるさまを写すのに「アン・トランブラン」というワイヤーを巻いたバネを使い、ジュエリーを揺らして輝きを増した。

Artistic birds 芸術のように美しい鳥

シャルル・メレリオ、孔雀のブローチ
1910年頃/プラチナ、ダイヤモンド、エナメル、オニキス/個人蔵
© Benjamin Chelly

パラワンコクジャク
年代未詳/剥製標本/山階鳥類研究所所蔵
© UMUT

ギュスターヴ・ボーグラン
孔雀のブローチ
1865年頃/ゴールド、パール、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルド/個人蔵
© Benjamin Chelly

カルティエ
孔雀のブローチ
1947年/プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、エメラルド、サファイア、ルビー/個人蔵
© Benjamin Chelly

ピエール・ステルレ
鳥のブローチ
年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、アクアマリン、ダイヤモンド、サファイア/個人蔵
© Benjamin Chelly

Artistic birds 芸術のように
美しい鳥

メスを魅了するために発達したオスのクジャクの羽は、扇状に広がる形や目玉模様などそれ自体が宝石のよう。当然ジュエリーの格好のモチーフとなり、その特徴を貴石の色に置き換え、形をデフォルメしていった。特にピエール・ステルレ(1905-1978)は飛翔体としての鳥に魅せられ、飛ぶ鳥の速さや敏捷さを様式化して表現した。

Information

インターメディアテク開館10周年記念
特別展示『極楽鳥』
東京・丸の内〈KITTE〉にあるミュージアム〈インターメディアテク〉にて、5月7日まで開催されている。
●東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE インターメディアテク3階。TEL 050 5541 8600。11時~18時(金・土~20時)。月曜休。入館無料。
www.intermediatheque.jp
主催: 東京大学総合研究博物館+レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校
協力: 山階鳥類研究所
協賛: ヴァン クリーフ&アーペル
企画: 東京大学総合研究博物館インターメディアテク寄付研究部門+東京大学総合研究博物館国際デザイン学寄付研究部門

特別展示『極楽鳥』
オフィシャルムービー