SCROLL
MINI LIVING  Casa BRUTUS

「都市を豊かに暮らす」<MINI>が提案する新しいライフスタイルとは。

MINIが提案するのは、
クルマだけではありません

コンパクトな空間をいかに創造的に使い、豊かに過ごすか。
1959年に初代〈MINI〉が生まれて以来、一貫してブランドが掲げるテーマを
パビリオンやインスタレーションによって”暮らし”に拡張してきた〈MINI LIVING〉。
活動を初期から目撃してきたCasa BRUTUSが、その模様をご紹介します。

Beijing
姿を変えていく建築

UrbanCabin

2018

“反射”をキーワードに、
姿を変えていく建築を創造

〈MINI〉が世界各都市で新しい住まいのあり方を提案する「アーバン・キャビン」。 その最新作が、北京に出現! 設計を担当した地元建築家の孫大勇に話を聞きました。

photo_Greg Mei
text_Junko Haraguchi

〈国家体育場〉(「鳥の巣」)に隣接する『HOUSE VISION』会場に登場したMINI LIVINGパビリオンと建築家の孫大勇。周囲の景色が映りこみ万華鏡のように見える天窓を見上げる。

READ MORE

〈MINI LIVING〉は「空間の創造的利用」をテーマに、〈MINI〉が世界各地で展開するプロジェクト。空間の可能性を様々な場で提示してきた。2017年にはさらに「アーバン・キャビン」と名づけた新プロジェクトを始動。その土地の建築家と協働し、その地にふさわしい住まい方を提案する試みだ。ロンドン、NYに続き、2018年の秋には北京で第3弾を実現。中国で初開催された『HOUSE VISION』にそのパビリオンが登場した。

地元の建築家として選ばれたのは、30代の孫大勇(スン・ダヨン)。北京とウィーンに事務所を構え、国際的なセンスと環境保護への姿勢が注目される新鋭だ。プロジェクト参加にあたり、テーマに据えたのは、北京旧市街の住まいの文化の「反射」だという。

「物理的側面と精神的側面からの“反射”を試みました。小屋の天窓にはアクリル板を貼って旧市街の周囲の景色が反射するように。またブランコには、私の世代が共通に持つ幼少期の体験がよみがえり、心に様々な思いが“反射”するように」。そんな仕掛けにより空間の内外、心の過去と未来がつながり、豊かな体験ができる15㎡の空間が生まれた。さらに仕切りの壁もテーブルもベッドも可動性抜群、戸外にも出せる作りにした。こうすることで住む人と自然との対話を重視。仕切りの壁を動かせるようにすることで、住人の成長に応じて姿を変える生き物のような住まいを提案している。「堅牢不変でなく、姿を変える建築こそ環境への負荷を減らす未来の建築なのではないでしょうか」と孫は語る。

自然光あふれるコージーなバスルーム

ポリカーボネートの天井から自然光が豊かに入り、小さくても気持ちのよいシンプルなバスルーム。有孔ボードを使用した側壁には棚などを自分好みに取り付けることができる。

壁兼テーブルで敷地を最大活用

タテにすると壁に、ヨコにするとテーブルになる仕組み。しかも室内からも外からも使用可能。屋内外を緩やかにつなぎながら、狭い敷地を有効に使うことを意図した。

来場者に大人気だった白いブランコ

見上げると天窓に貼られたアクリル板に周囲の景色が映りこみ万華鏡を覗くよう。これは孫の幼い頃の体験が元になっている。リラックスして腰かければ創造力が刺激される。

昼間は外で使用可。革新的なベッド

下に敷かれたレールによって、外に出しても使えるベッド。自然光のもとで昼寝や読書をするもよし、ソファ代わりにみんなで腰かけて日光浴するもよしだ。

今後の夢はこんな小空間を一つのモジュールとし、工場生産していくこと。「3Dプリンターやロボットなど先端技術が発展した今こそ、モジュール住宅の可能性がある。品質管理された工場で生産し現地で組み立て、不要になったら解体してまた別の住人のために運び再利用する。それは環境保護に貢献できるはず」と言う。ダイナミックなアイデアを持つ孫のような建築家と企業が揃い、動きの早い中国。画期的な住まいがここから生まれる可能性も大いにありそうだ。

Architects
Dayong Sun / スン・ダヨン

東北地方の長春市出身。北京の中央美術学院大学院で「生体工学建設」を研究。2013年、パートナーと共に槃達建築事務所を設立。以降、グリーン建築を理念に建築、インテリア、ランドスケープなどを手がけ2016年には米国Architizer A+Awardsの「2016年度新鋭事務所賞」を受賞。事務所は北京旧市街の元工場棟のリノベーション。

MINI LIVING

Urban Cabin in Beijing 360° Tour

Milano
自由自在なモジュールシステム

Built by All

2018

自分でカスタムできるモジュール式システム

コンパクトなサイズを最大限に生かすことで、快適さや楽しさを実現したクルマ〈MINI〉。 同じ考え方で住空間を捉えた展示はこの年も大好評だった。

photo_Sohei Oya (Nacása & Partners)
text_Takahiro Tsuchida
editor_Hisashi Ikai

大きく弧を描くオープンキッチンがそのまま奥に延び、ダイニングテーブルに。同じモジュールがアイデア次第で多様な空間に生まれ変わる。

READ MORE

「限られた住空間を革新するために、伝統的なデザインプロセスは今も有効なのだろうか?」

ミラノ・デザインウィークで〈MINI〉が行った『MINI LIVING-ビルト・バイ・オール』展は、そんな問いかけをテーマにした。ミラノで3回目となった2018年の出展に起用されたのは、ニナ・トルストラップ率いるロンドンのスタジオママ。彼らが考えたモジュール式システムは、ライフスタイルに合わせて人々が自由に空間をデザインできるというものだ。

小さなボックスの中に、来場者が思い思いにモジュールを組んでいく体験コーナーも。

音楽プロデューサーの部屋を想定したブルーのスペース。レコードや機材とともに、イタリアデザインの名作もスタイリングされた。

イエローの空間は、植物が並ぶイラストレーターの部屋。「トーテム」と名づけたフレキシブルなモジュラーシステムを活用し、さまざまな展開を見せた。

会場となった元工場の建物では、このシステムを用いた数種類の空間を提案。たとえばキッチンは調理と食事のスペースを一体とし、使う人数を限定しない構成に。その他のシーンも小さな空間を快適に使う工夫を凝らした。 限られた空間を創造的に活用するのは、〈MINI LIVING〉の一貫したコンセプトであり、〈MINI〉というクルマの個性。その独自の空間哲学は、都市の暮らしをインスパイアしつづける。

Architects
Nina Tolstrup / ニナ・トルストラップ

2007年、ロンドンに事務所を設立。今、最も注目される若手建築家。〈グッゲンハイム・ヘルシンキ〉のコンペで最終の6候補に残り、〈ロンドン博物館新館〉のコンペでは優勝を果たした。

MINI LIVING

Salone Del Mobile 2018 | 360° Tour

Milano
“呼吸する”ような住空間

Breathe

2017

環境への意識を喚起する
“呼吸する”ような住空間

まるで薄い膜のような外壁で覆われた3フロア構成の建物。 内外・上下の境界を曖昧にしたユニークなパビリオンが伝えることとは。

illustration_Kenji Oguro editor_Akio Mitomi

未来の都市生活空間を提案するプロジェクト〈MINI LIVING〉は2016年にスタート。同年のミラノ・デザインウィークで《Do Disturb(邪魔して)》、ロンドン・デザインフェスティバルで《Forests(森)》と題したインスタレーションを発表した。そして翌年のミラノサローネではついに3階建ての住空間が出現! トルトーナ地区の路地裏に大行列ができるほどの人気を集めた。

トルトーナ地区の路地裏に建つ〈MINI LIVING - Breathe〉。日が暮れると光を透過するファブリックの“壁”がランタンのような明かりを漏らす。

READ MORE

設計をしたのはSANAAで出会ったフロリアン・イーデンブルフとジン・リウが2008年に設立した建築事務所SO - IL。2010年の〈MoMA PS1〉若手建築家プログラムで優勝、一躍注目を集めた俊英だ。その受賞作《ポールダンス》は大きなボールとネットを使った遊び心あふれる作品だったが、今回のインスタレーション《Breathe(呼吸)》も、SO - ILらしい作品となった。

「これは生活をアクティブな経験に変えることで、環境への意識にスポットライトを当てたり、資源があって当たり前という風潮に向き合うための建築です」と、SO - IL共同代表のイリアス・パパジョルジュがコンセプトを語る。

Roof Garden

ミラノの空が望める屋上にはグリーンが配置され、また雨水を集め階下に供給する役割も想定されている。

3rd Floor

シャワーヘッドを備えたバスルーム(手前)と、ネット上に浮かぶベッドルームに充てられた3階。

2nd Floor

リビングエリアにもネット上に浮かぶ空間が2つ(左)。各々中3階・中2階のような曖昧な高さにある。

1st Floor

エントランスと町に開かれたキッチンを兼ねる'階。奥のらせん階段が屋上庭園までの動線となる。

間口約3×奥行き約5×高さ約10mの金属フレーム構造で分解可能な最小限住空間。壁の役割を果たすファブリックは気候に応じて変更可能。2階~屋上庭園の床材にはグレーチングとネットが用いられた。

建物と外部を隔てるのは光を通す薄いファブリック。実際に中に入り、1階から3階へと上がっていくと内部空間も同じ素材の〝壁〞で曖昧に区切られている。空気清浄機能も想定されたファブリックは、建物の外や隣の〝部屋〞の気配をダイレクトに伝える。

また2階から上の床材はグレーチングで、上下の境界も曖昧だ。極め付きは2階リビングや3階ベッドルームの床が一部ネット張りになっている点。人が入れば床は沈み、階下の天井を押し下げる。

より過酷な環境での生活もおのずとイメージさせる建築で、コンセプトは見事に表現された。

Architects
SO - IL / ソイル

イリアス・パパジョルジュ(右)ら3名によるNYの建築事務所。近作はカリフォルニア大学デービス校の〈マネッティ・シュレム美術館〉。左は〈MINI LIVING〉プロジェクトリーダーの建築家オカ・ハウザー。

MINI LIVING

‘Breathe’ Installation 360° Tour

London
新時代の“サードプレイス”

Forest

2016

〈MINI〉が提案する「サードプレイス」とは?

ロンドンのデザイン・フェスティバル期間中に登場した3つのパビリオン。 担当した建築家アシフ・カーンと〈MINI〉のオカ・ハウザーに狙いを聞いた。

photo_Haruko Tomioka
text_Megumi Yamashita

人通りの多い歩道にあり、さまざまなバックグラウンドの人が通過し、中のベンチに腰掛けて交流する場。

その先の通りの角にあり、都会の喧騒をしばし忘れ、緑に囲まれてリラックスするための瞑想的スペース。

静かな公園の中にあり、充電ポイントやネット環境も装備。家でも職場でもないサードプレイスで新しい創作が生まれるかも? 会期後、植物は地元の施設などに寄贈された。

READ MORE

ロンドンで毎年9月半ばに開催されるデザイン・フェスティバル。数ある展示の中でも毎回ハイライトとなるのが、注目の建築家のデザインで仮設される「ランドマークプロジェクト」だ。2016年は、〈MINI〉が手がける〈MINI LIVING〉と建築家、アシフ・カーンが組み、ショーディッチにつくり上げた3つのパビリオンが大いに話題を集めた。

「〈MINI LIVING〉はこれからの都会の暮らし方を探るシンクタンクです。小さな車体で広々とした車内空間を実現した〈MINI〉が、限られたスペースを最大限に活用した住まいの在り方などを提案しています。ミラノ・デザインウィークではシェアリビングの展示をしましたが、住宅不足が問題化するロンドンでは、街の中に“シェアする場”を設け、コミュニティーを活性化する、自宅でも職場でもない“サードプレイス”を提案したいと考えました」。プロジェクトをリードした〈MINI〉のオカ・ハウザーは言う。それを受け、カーンは「コネクト」「リラックス」「クリエイト」をテーマに日本の“森林浴”にインスパイアされた空間をつくることを考えたという。

「温室のように、フレームと屋根にはアルミニウム、壁はポリカーボネート板を3〜4層にして使って柔らかい光に満ちた空間をつくり、そこを植物で満たしました」とカーン。「庶民的な下町から、クリエイティブなスタートアップが集まるエリアへと急激なシフトが進むこの界隈。『コネクト』は1日1万人もが通過する“森の廊下”、バックグラウンドが異なる人々の交流の場にもなる多目的な空間です」。植物は人と街とをつなげるシンボルで、鉢植えが本の代わりとなった図書館のイメージだ。

その先にある「リラックス」は、よじ登って中に入り、“森林浴”によって頭をクリアにする空間。「その後、充電設備やネット環境も整った『クリエイト』で何か新しい創作が生まれれば、というコンセプトです」とカーンは説明する。ハウザーが続けた。「空間のクリエイティブな活用法を探るのが〈MINI LIVING〉の目的。アシフがデザインした3つの空間によって人々がつながり、新しい何かが生まれるきっかけになればと思っています。フェスティバル期間の9日間だけの展示ですが、〈MINI〉が残した“轍”(わだち)が街をいい方向に変えていくことを願っています」。

Architects
Asif Khan / アシフ・カーン

2007年、ロンドンに事務所を設立。今、最も注目される若手建築家。〈グッゲンハイム・ヘルシンキ〉のコンペで最終の6候補に残り、〈ロンドン博物館新館〉のコンペでは優勝を果たしたのも記憶に新しい。

MINI LIVING
Milano
交流が生まれる集合住宅

Do
Disturb

2016

内外をつなぐ”棚”を使った
新しいコミュニティの作り方。

第一回目の〈MINI LIVING〉設計者として選ばれたのは日本人建築家の西田司+棗田久美子/オンデザイン。都市部にみられる、互いが近接しあった住環境を豊かに変えるためのアイデアとは。

photo_BMW Press
text_Casa BRUTUS

敷地内に複数のワンルームが密集するシチュエーションを想定。

READ MORE

2016年にミラノ・デザインウィークで発表された第一回目の〈MINI LIVING〉では、、30平米のアパートが近接し合う都心の集合住宅を想定した新しい住まいの形が提案された。考案者は、日本人建築家の西田司率いるオンデザインだ。

西田がこころみたのはあたらしいシェアハウスのあり方。シェアするものは、キッチン・リビング・水回りなどではなく、個々の趣味やライフスタイルだ。住み手の趣味やコレクションが詰まった「棚」を扉のように共有部に開くことで、隣人とコラボレーションして楽しむ仕組みが考えられている。

例えば音楽好きな人とコーヒー好きな隣人が、お互いのコレクションを紹介しつつ交流することができる。個人の趣味が詰まった棚を共有空間に接続することで、集合住宅に住まう新しい豊かさを生み出そうと試みたのだ。

室内に誂えられた棚は反転可能で、窓のように外部に開くことができる。

棚は窓だけでなく扉にもなる。外に開くと、まるで一つの「展示壁」が出現したような印象に。

外から見た様子。住人の趣味嗜好が外に開かれていることで、外を行き交う人たちとの交流が生まれる、という仕組みだ。

展示タイトルの《Do disturb(邪魔して)》は反語であり、都市がもつ匿名性へのアンチテーゼとして、人々の交流が促進されることを目指している。〈MINI〉のオカ・ハウザーは今回のプロジェクトの狙いをこう話す。

「都市ではスペース自体が希少であり、人々はそれを占有でなく”共有”する方向へと向かうでしょう。つまり、都市生活は今後、より共同的かつ、相互的なものになると思います。このインスタレーションでは、個のプライバシーと開かれたコミュニティとの共存を、最小限の構造で実現しようとする試みです」

果たしてその思いは、西田の棚への新たな眼差しによって具現化された。

Architects
西田 司 / ニシダ オサム

使い手の創造力を対話型手法で引き上げ、様々なビルディングタイプにおいてオープンでフラットな設計を実践する。2016年ヴェネチアビエンナーレ日本館招待出展・審査員特別表彰。

MINI LIVING

Casa BRUTUSはMINI 
LIVINGを追い続けます!