Urban
Cabin“反射”をキーワードに、
姿を変えていく建築を創造
〈MINI〉が世界各都市で新しい住まいのあり方を提案する「アーバン・キャビン」。 その最新作が、北京に出現! 設計を担当した地元建築家の孫大勇に話を聞きました。
photo_Greg Mei
text_Junko Haraguchi
〈MINI LIVING〉は「空間の創造的利用」をテーマに、〈MINI〉が世界各地で展開するプロジェクト。空間の可能性を様々な場で提示してきた。2017年にはさらに「アーバン・キャビン」と名づけた新プロジェクトを始動。その土地の建築家と協働し、その地にふさわしい住まい方を提案する試みだ。ロンドン、NYに続き、2018年の秋には北京で第3弾を実現。中国で初開催された『HOUSE VISION』にそのパビリオンが登場した。
地元の建築家として選ばれたのは、30代の孫大勇(スン・ダヨン)。北京とウィーンに事務所を構え、国際的なセンスと環境保護への姿勢が注目される新鋭だ。プロジェクト参加にあたり、テーマに据えたのは、北京旧市街の住まいの文化の「反射」だという。
「物理的側面と精神的側面からの“反射”を試みました。小屋の天窓にはアクリル板を貼って旧市街の周囲の景色が反射するように。またブランコには、私の世代が共通に持つ幼少期の体験がよみがえり、心に様々な思いが“反射”するように」。そんな仕掛けにより空間の内外、心の過去と未来がつながり、豊かな体験ができる15㎡の空間が生まれた。さらに仕切りの壁もテーブルもベッドも可動性抜群、戸外にも出せる作りにした。こうすることで住む人と自然との対話を重視。仕切りの壁を動かせるようにすることで、住人の成長に応じて姿を変える生き物のような住まいを提案している。「堅牢不変でなく、姿を変える建築こそ環境への負荷を減らす未来の建築なのではないでしょうか」と孫は語る。
今後の夢はこんな小空間を一つのモジュールとし、工場生産していくこと。「3Dプリンターやロボットなど先端技術が発展した今こそ、モジュール住宅の可能性がある。品質管理された工場で生産し現地で組み立て、不要になったら解体してまた別の住人のために運び再利用する。それは環境保護に貢献できるはず」と言う。ダイナミックなアイデアを持つ孫のような建築家と企業が揃い、動きの早い中国。画期的な住まいがここから生まれる可能性も大いにありそうだ。
東北地方の長春市出身。北京の中央美術学院大学院で「生体工学建設」を研究。2013年、パートナーと共に槃達建築事務所を設立。以降、グリーン建築を理念に建築、インテリア、ランドスケープなどを手がけ2016年には米国Architizer A+Awardsの「2016年度新鋭事務所賞」を受賞。事務所は北京旧市街の元工場棟のリノベーション。