SPECIAL JAPANESE MODERN ARCHITECTURE 55
奈良
034 大和文華館
The Museum Yamato Bunkakan (1960)

1960年開館。設計:吉田五十八。近代数寄屋の祖とされる吉田五十八が、コンクリートで日本的空間を目指した代表作のひとつ。蛙股池に面した自然豊かな〈文華苑〉の中にあり、小高い丘を登った先に、城郭風のなまこ壁や虫籠窓をあしらった外観が姿を現す。この意匠は、美術館の収蔵品・国宝《松浦屏風》の背景となる桃山文化からイメージを広げたもの。なまこ壁は青いタイル張りでモダンにアレンジされている。展示室は竹林の揺れる中庭を囲う正方形の空間。高円山を望むテラスを設けるなど、美術鑑賞の合間に自然を眺めてリラックスできる工夫がある。収蔵品は日本、中国、朝鮮を中心に、国宝4件、重要文化財31件を含む約2,000件。2010年の改装工事では展示ケースや照明を更新。外壁も塗り直し、竣工当時の鮮やかな姿が戻った。