SPECIAL JAPANESE MODERN ARCHITECTURE 55
栃木
005 日光市今市文化会館 (旧今市市文化会館)
Nikko City Imaichi Cultural Hall (1977)

1977年竣工。設計:神谷五男。公共施設と聞いて連想するような箱形ではない、個性的な文化会館である。約1,000席の大ホールの客席は3層に配され、それらを結ぶ動線がダイナミックな外観を形づくる。動線が最も交錯するのが正面部分。見ると今にも食いかかりそうなジョーズか恐竜のよう。しかし、本作は外観のインパクトだけでなく、市街から引き込んだ動線を立体に畳み込み、印象深い内部空間を成立させている。設計者は、日光杉並木を連想させるトンネル空間を地域の新しい顔にしたいと述べた。これも空間優先のモダニズムなのか? それとも形態優先のポストモダニズムか? 批評家チャールズ・ジェンクスが『ポストモダニズムの建築言語』を著した77年に、丹下健三の門下生によって設計された本作は、今も私たちに謎かけしているかのようだ。