トーマス・マイヤーは日本で何を感じたか? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

トーマス・マイヤーは日本で何を感じたか?

DAY 3

4:00pm 香川県立体育館

1964年竣工。設計:丹下健三。吊り構造の曲面屋根と船形のダイナミックな形状が特徴。ホワイエの家具は剣持勇がデザイン。アリーナ部分は耐震問題で2007年夏から立ち入り禁止となっていた。丹下事務所の耐震改修案をもとに3度入札を行うも不調。2014年9月30日より閉鎖。

“これを壊すのは惜しい。建築博物館にしてはどうか。”

5:00pm 香川県庁舎

1958年竣工。設計:丹下健三。通りから敷地内に自然と導かれるように設置されたピロティや透明性のあるロビーなど。広く県民に開かれた県政・戦後民主主義を建築で表現した、丹下の代表作のひとつ。この建物が戦後の庁舎建築のひな形となったといわれるほど影響を与えた。1階ロビーには香川出身の芸術家、猪熊弦一郎の壁画や、剣持勇がデザインした家具も竣工当時のまま置かれている。

“県民にも、ここで働く県の職員にも愛されている建築だ。”

東京以外でも見てみたい建築があるというトーマスは、翌日、香川県高松へと向かった。目指すは、丹下健三の2つの作品だ。

空港から車でまずは〈香川県立体育館〉へ。完成は1964年の東京オリンピックの年。同じ年にできた国立代々木競技場と同じ「吊り構造」でできていて、いわば兄弟作品ともいえる関係だ。

だが建物のデザインは代々木とは一味違う。あちらがとぐろを巻く巨大生物なら、こちらは「和船」。いにしえより海上交通で栄えたこの地へのオマージュとして船がモチーフになっているのだ。「これはすごい。世界に類を見ないデザインだ」とトーマスも唸る。

しかしこの体育館は現在、使われていない。耐震補強に迫られ、2012年に丹下都市建築設計が改修案をまとめた。だが県による3回の業者選定の入札は不調に終わり、体育館は50年の幕を閉じた。その現状を知りトーマスは「この建築は価値がある。建物自体も展示となるような建築博物館にしてはどうだろう」と熱く訴えた。

続けて体育館から車で5分のところにある〈香川県庁舎〉へ。1958年に完成した旧本館のデザインを見るなり、トーマスの口からため息が漏れた。

「こんな美しい建築があるなんて……。日本の伝統的な神社仏閣に見られる木造建築のデザインを鉄筋コンクリートで表現している」

今回の短い滞在だけでは回り切れないとトーマス。再び来日し、より多くのモダニズム建築を見たいと、我々にその決意を語った。