FASHION
石田潤の In the mode|ラフ・シモンズによる新生〈カルバン・クライン〉。
March 31, 2017 | Fashion | casabrutus.com | text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
今シーズン、最も注目されたショーといえば2月にニューヨークで行われたラフ・シモンズの〈カルバン・クライン〉デビューショウだろう。2016年8月に、ラフのチーフ・クリエイティブ・オフィサー就任が告げられて以降、ファッション界が待ちに待ったラフの新たな挑戦、新生〈カルバン・クライン〉がベールを脱いだのだ。
ラフ・シモンズはいかに新生〈カルバン・クライン〉を打ち出したのか? まず彼の新しい立場がチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)であることに注目したい。多くのデザイナーの肩書きとしてクレジットされるクリエイティブ・ディレクターとは異なり、CCOはデザインのみならずマーケティング・コミュニケーションも含めたブランドの宣伝戦略全般を統括する役職であり、経営にも関与する。ラフはCCOとして、〈カルバン・クライン〉のリ・ブランディングに乗り出したのだ。
2017年1月22日、パリ・オートクチュール初日に〈カルバン・クライン〉のインスタグラムに告知があがった。それは、新メイド・トゥ・メジャーライン《Calvin Klein By Appointment》をスタートするというものだった。
「カルバン・クラインはアイコニックな下着やデニムだけのブランドではない。それ以上のものだ」とのラフの言葉とともに、全14ルックのイメージが次々にアップされた。ラフはこれらのルックが「アメリカの女性たち、そしてアメリカのファッションを祝うものである」とコメントしている。
奇しくもこの日は、トランプ政権発足から2日後となり、世界各地でこの新大統領による女性蔑視発言に抗議する大規模なデモが行われた。14ルックの中には星条旗モチーフのアイテムも含まれ、セレブリティら一部顧客のみに提供されていたブランドのオーダーメイドラインが、広く人々へと開かれたことを告げた。
「カルバン・クラインはアイコニックな下着やデニムだけのブランドではない。それ以上のものだ」とのラフの言葉とともに、全14ルックのイメージが次々にアップされた。ラフはこれらのルックが「アメリカの女性たち、そしてアメリカのファッションを祝うものである」とコメントしている。
奇しくもこの日は、トランプ政権発足から2日後となり、世界各地でこの新大統領による女性蔑視発言に抗議する大規模なデモが行われた。14ルックの中には星条旗モチーフのアイテムも含まれ、セレブリティら一部顧客のみに提供されていたブランドのオーダーメイドラインが、広く人々へと開かれたことを告げた。
2月9日、ラフのデビューショウ1日前に、再びインスタグラムにイメージがあがった。アンディ・ウォーホル、ダン・フレイヴィン、リチャード・プリンス、スターリング・ルビーといったアメリカ現代アート史に名を連ねるアーティストたちの作品の前に立つ、下着やデニム姿の男女たち。「アメリカン・クラシック」とタイトル付けられた広告イメージは、〈カルバン・クライン〉の下着とデニムがポップアートと並んで現代アメリカを形成するアイコニックなアイテムである、というラフの意思表明なのだろう。
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illustration Yoshifumi Takeda
石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。