DESIGN
〈代官山 蔦屋書店〉にデザイナー鈴木啓太の近作が並びます!
October 31, 2020 | Design | casabrutus.com | photo_Kenya Abe text_Yoshinao Yamada
日用品から通勤電車までーープロダクトデザイナー、鈴木啓太の近作を展示するエキシビションが11月22日まで〈代官山T-SITE 代官山 蔦屋書店〉で開催中です。
鈴木啓太の仕事は幅広い。ビールを注ぐと上部が白く泡立つ円錐形のグラスは、その姿から《富士山グラス》と名付けられた。シンプルだがユーモラスで愛らしいグラスは世界各国で話題を集め、鈴木の名を広めるきっかけとなった。その後、彼のデザインはよりアノニマスな佇まいへとシフトしていく。グラスをはじめとする数々の日用品は家電製品に広がり、ついには相模鉄道の電車《相鉄20000系》に行き着いた。第一次世界大戦後からアメリカで活躍したインダストリアルデザイナー、レーモンド・ローウィは“口紅から機関車まで”をデザインしたと言われるが、鈴木は21世紀の日本で日用品から電車までを幅広くデザインする。そんな鈴木の個展が、11月22日まで〈代官山T-SITE 代官山 蔦屋書店〉で開催中だ。
本展に『SMALL OBJECTS, LARGE HERITAGE - 大いなる遺産を次へ繋ぐ、小さなオブジェクト』と名付けた鈴木は、自身が大切にする「ヘリテージ」をテーマに掲げる。この数年、鈴木は工芸品の技術に目を向けながら、時に最新技術と融合した新たなデザインを提示してきた。たとえばフランク・ロイド・ライトの名作照明にオマージュを捧げた《TALIESIN®︎ ELEMENTS》は、光を和らげる木製プレートを陶器に置き換えた。釉薬のかかった陶板は優しい光を広げるが、形状そのものは3Dセラミックスの最新技術を用いたものだ。会場では、鈴木がこの2年ほどに手掛けた10アイテムを展示販売する。
本展に『SMALL OBJECTS, LARGE HERITAGE - 大いなる遺産を次へ繋ぐ、小さなオブジェクト』と名付けた鈴木は、自身が大切にする「ヘリテージ」をテーマに掲げる。この数年、鈴木は工芸品の技術に目を向けながら、時に最新技術と融合した新たなデザインを提示してきた。たとえばフランク・ロイド・ライトの名作照明にオマージュを捧げた《TALIESIN®︎ ELEMENTS》は、光を和らげる木製プレートを陶器に置き換えた。釉薬のかかった陶板は優しい光を広げるが、形状そのものは3Dセラミックスの最新技術を用いたものだ。会場では、鈴木がこの2年ほどに手掛けた10アイテムを展示販売する。
会場で目を見張るのが、三重県松阪市に拠点をもつ横濱金平のブランド〈KINPEI〉によるサウンドシステムだ。壁に立てかけられた巨大な木の板は、伊勢神宮の神域で育った樹齢300年超の御山杉だという。一見するとなにも仕掛けのない木そのものが面共振し、音を鳴らす。通常のスピーカーは音の方向性を設計することで個性豊かな音を奏でるが、〈KINPEI〉は板全体から音を鳴らすことで独自の音像を表現する。音を鳴らす仕掛けは背後に備え付けた。空間を包み込むような音を奏でるため、「楽器の構造を参考にしました」と鈴木はいう。
「オーケストラの演奏で使われるホールの床は木材を使い、さまざまな楽器もまた木を使います。スピーカーは紙管を使うことが多いですが、このサウンドシステムは木材の年輪に沿った繊維と空気層に振動を伝え、パイプオルガンのように音を鳴らしています」
「オーケストラの演奏で使われるホールの床は木材を使い、さまざまな楽器もまた木を使います。スピーカーは紙管を使うことが多いですが、このサウンドシステムは木材の年輪に沿った繊維と空気層に振動を伝え、パイプオルガンのように音を鳴らしています」
また、1号館では1907年から越前箪笥を作り続ける福井県の工房〈小柳箪笥〉の4代目、小柳範和と共創する〈OYANAGI〉からキャビネット「シグネチャーコレクション」を発表する。巧みな納まりで作られる日本の指物を、希少価値の高い世界の木材と組み合わせることで現代的なキャビネットを制作した。近年の仕事で、「ようやく日本のものづくりの芯にあるものがわかってきた」と鈴木。日本のものづくりで多用される木材だが、鈴木はこれまであまり用いずにきたと振り返る。しかし〈KINPEI〉のサウンドシステムや〈OYANAGI〉の「シグネチャーコレクション」を経て、やり尽くされたと感じていた木材を用いたデザインの可能性はまだまだあることに気がついた。新作〈OYANAGI〉は11月22日まで展示販売する。
また、新型コロナ禍の今年4月には全国の職人とプロジェクト「ONE FLOWERWARE」を立ち上げた。日本各地の陶磁器、ガラス、木工の工房と同形状のフラワーベースを制作した。職人技術によって作られるベースはどれも同じ図面をもとにしながら形が異なる。型から作る磁器、吹いて作るガラス、手で挽いて形作る陶器や木工など、すべてに手法が異なるからだ。そこに手工芸の魅力が宿る。
「コロナによるロックダウンを経て、あらためて心地よいものを作りたいとの思いが湧き上がってきました。いまデザインに求められるものが変わってきていることを肌で実感しています。100年使えるものを作りたい。そして、先人から預かった知恵を使い、ものの歴史を一歩進めたい。そうした姿勢でものづくりに向かいたいと考えています」
また、新型コロナ禍の今年4月には全国の職人とプロジェクト「ONE FLOWERWARE」を立ち上げた。日本各地の陶磁器、ガラス、木工の工房と同形状のフラワーベースを制作した。職人技術によって作られるベースはどれも同じ図面をもとにしながら形が異なる。型から作る磁器、吹いて作るガラス、手で挽いて形作る陶器や木工など、すべてに手法が異なるからだ。そこに手工芸の魅力が宿る。
「コロナによるロックダウンを経て、あらためて心地よいものを作りたいとの思いが湧き上がってきました。いまデザインに求められるものが変わってきていることを肌で実感しています。100年使えるものを作りたい。そして、先人から預かった知恵を使い、ものの歴史を一歩進めたい。そうした姿勢でものづくりに向かいたいと考えています」
『SMALL OBJECTS, LARGE HERITAGE - 大いなる遺産を次へ繋ぐ、小さなオブジェクト』
〈代官山T-SITE 代官山 蔦屋書店〉東京都渋谷区猿楽町17-5。〜11月22日。9時〜23時。展示場所、期間は作品によって異なる。〈KINPEI〉は2号館1階建築デザイン側ギャラリーにて11月3日まで、〈OYANAGI〉は1号館1階旧山手側スペースにて11月22日まで、「ONE FLOWERWARE」、鍋島虎仙窯、「EXPONENTIAL」は1号館1階小部屋内にて11月16日まで、《DYK》〈KOSEN〉〈THE〉3号館1階料理フロアにて11月16日まで。