FOOD
攻めるフレンチ〈オード〉|寺尾妙子のNEWSなレストラン
December 15, 2017 | Food | casabrutus.com | photo_Kayoko Aoki text_Taeko Terao editor_Rie Nishikawa
料理もインテリアもエッジの効いた〈Ode(オード)〉は、フレンチの大御所シェフたちからの評価も高かった前〈シック・プッテートル〉シェフ、生井祐介が独立して開いた店だ。
「シグネチャーです」。
差し出された「秋刀魚 ブーダン 茄子」は、器も料理も一面グレーというひと皿に驚く。店内はカウンター、壁、天井、床、スタッフの制服もみんなグレーだ。
極薄のグレーの破片を口にしてみる。スーッと口の中で溶けながら、サンマの風味が弾ける。卵白をベースにサンマの頭と骨にアンチョビを加えて焼いたメレンゲだ。下に隠れているのはサンマのコンフィと炙り牛肉のタルタル。
「一緒に召し上がってください。つなぎにサンマのワタ、豚の背脂と血、キャラメリゼした玉ネギを合わせたサンマのブーダンノワールのピュレが入っていますから」
タンパク質が変性しない38度という低温の油でコンフィしたサンマも軽く炙った牛肉も、火は通っているものの、フレッシュな質感ゆえ、素材の持ち味がストレートに伝わってくる。サンマのブーダンノワールもクセを感じさせず、全体をまとめる、いいつなぎ役となっている。
差し出された「秋刀魚 ブーダン 茄子」は、器も料理も一面グレーというひと皿に驚く。店内はカウンター、壁、天井、床、スタッフの制服もみんなグレーだ。
極薄のグレーの破片を口にしてみる。スーッと口の中で溶けながら、サンマの風味が弾ける。卵白をベースにサンマの頭と骨にアンチョビを加えて焼いたメレンゲだ。下に隠れているのはサンマのコンフィと炙り牛肉のタルタル。
「一緒に召し上がってください。つなぎにサンマのワタ、豚の背脂と血、キャラメリゼした玉ネギを合わせたサンマのブーダンノワールのピュレが入っていますから」
タンパク質が変性しない38度という低温の油でコンフィしたサンマも軽く炙った牛肉も、火は通っているものの、フレッシュな質感ゆえ、素材の持ち味がストレートに伝わってくる。サンマのブーダンノワールもクセを感じさせず、全体をまとめる、いいつなぎ役となっている。
火を入れた牛肉に生イカがのった一品という当時としてはセンセーショナルだった「肉と魚を合わせた料理」をシグネチャーとしたのはフランス料理会の巨匠、ピエール・ガニェールだったが、10年以上経った今でも、魚と肉を一体化させる料理は珍しい。
グレー一色の「無」から銀色に輝くサンマや艶やかに赤い肉という「生」が現れるさまは、インスタレーションのようでもある。
グレー一色の「無」から銀色に輝くサンマや艶やかに赤い肉という「生」が現れるさまは、インスタレーションのようでもある。
生井シェフ、かなり攻めている。オーナーとして独立した今、余すとこなく自分を表現できるようになったのだろう。前とは次元が違う。
1品めに出てくる金の宝珠型容器。ふたを開ければ、顔を出す「ドラ◯ン ボール」。舌にのせれば、カカオバターのコーティングがゆっくりと溶け出し、ジワジワとオマールの風味が広がっていく。楽しいアミューズでの始まりは幸先がいい。
1品めに出てくる金の宝珠型容器。ふたを開ければ、顔を出す「ドラ◯ン ボール」。舌にのせれば、カカオバターのコーティングがゆっくりと溶け出し、ジワジワとオマールの風味が広がっていく。楽しいアミューズでの始まりは幸先がいい。
コースは最後の「小さなお菓子」まで12、13品。楽しい一品があるかと思えば、ハーブや花をあしらった「大根 大根餅 烏賊」のようなロマンティックなひと皿も挟み込まれる。店名の〈オード〉とは叙事詩という意味。生井シェフは25歳で料理人を志すまでは音楽で身を立てるつもりだったという。
Loading...
illustration Yoshifumi Takeda
寺尾妙子
てらお たえこ 食ライターとして雑誌やWEBで執筆。好きな食材はごはん、じゃがいも、トリュフ。現在、趣味の茶の湯に邁進中。