隠れ家フレンチ〈フランツ〉のナチュラルな世界観。
素材の自然な持ち味を大切にするフレンチ〈フランツ〉が密かに人気だ。
クモエビは炭火による香ばしさとしっとりと甘いエビそのものの魅力、生ハムの塩味と旨みがあれば、十分という考え方。調理法も素材もそぎ落とした分だけ、鮮度抜群のエビの存在感が際立っている。
ロースト後に燻製にかけた仔羊の背肉は仕上げに、炭火で炙ることで香ばしさをプラスする。添えるのは自家製のコンディモン(フランス語で薬味)だ。生姜、島唐辛子、麹などを1か月以上乳酸発酵させたピリ辛風味。ジューシーな仔羊にエキゾチックな味わいがマッチする。付け合せの九条ねぎはあえて、根っこ付き。通常、捨ててしまう部位の価値にも気づいてほしいという、福田からのメッセージ。確かに食べてみると甘く、複雑な滋味に満ちている。
素材は高知や那須の農家からの産直や、毎週土曜に行われる青山のファーマーズマーケットから100%オーガニックの野菜や三重・尾鷲からの魚など、できる限りナチュラルなものを扱い、ワインもフランスの自然派のみを揃える。
今やモダン・フレンチはそれぞれが独自の形で進化を遂げている。特有の食材や郷土料理の要素を取り入れたり、化学実験のような調理法を試みたりと、その方向はさまざまだ。そんな時代にあって〈フランツ〉は素材の持ち味を表現するスタイル。よりシンプルに、よりナチュラルに、それは食の本質を問うことでもあるのだ。
