デザインのいいレストラン #2 〈スマイルズ〉が手掛けるアートレストラン。
レストランは単に美食のみを求めて行くところではなくなったようです。最新のレストランが提供するのは、今まで味わったことのない空間体験。このコラムでは東京に次々と誕生している「デザインのいいレストラン」を厳選し、ご紹介していきます。2回目は〈スープストックトーキョー〉などを展開する〈スマイルズ〉が手掛けた〈パビリオン〉。有名作家の作品が一堂に会するアートレストランとしても注目を集めています。
「パビリオン」という言葉が日本で広く使われるようになったのは、1970年に大阪で開催された日本万国博覧会が機と言われている。意味は「博覧会場の中に点在する展示館」。名の通り、店内はアーティストの作品が中心となる小空間に分かれた造りに。夢や希望、未来といった博覧会のポジティブなイメージを、現代の食のシーンに変換・投影し、愛とアートに祝福された、気持ちが高揚する場所を、大小の「パビリオン」の連なりによって演出するというのがコンセプトだ。クリエイティブディレクターは〈スマイルズ〉の野崎亙で、インテリアデザインも同社が手掛ける。空間デザインで魅せるというより「アート作品が主役」であることにこだわって、店内全体が構成されている。
長い回廊を抜けてたどり着く夜用のエントランスから店内に入ると、バーカウンターの上に浮かぶ巨大な球体のオブジェが目に入る。この作品《Black Ball》を手掛けたのは、昨年、広島県福山市に完成した〈禅と庭のミュージアム〉内にある《洸庭》の設計で話題を呼んだ彫刻家・名和晃平だ。球状の照明の隙間から見える直接光と内部のミラーに反射する間接光が、空間に怪しく拡散する。
一方、昼用のエントランス側でゲストを迎えるのが、現代美術家・西野達による《What if someone finds out?(バレたらどうする?)》。シンガポール〈マーライオン・ホテル〉のアートプロジェクトなどで知られる西野は、屋外のモニュメントを室内に取り込むなど、公共空間の常識を覆すような大掛かりなインスタレーションで知られる。街灯につながれていたベスパを、街灯ごと引っこ抜いて高さ5メートルを超える天井から吊るした作品は、圧巻のスケールだ。
長い回廊を抜けてたどり着く夜用のエントランスから店内に入ると、バーカウンターの上に浮かぶ巨大な球体のオブジェが目に入る。この作品《Black Ball》を手掛けたのは、昨年、広島県福山市に完成した〈禅と庭のミュージアム〉内にある《洸庭》の設計で話題を呼んだ彫刻家・名和晃平だ。球状の照明の隙間から見える直接光と内部のミラーに反射する間接光が、空間に怪しく拡散する。
一方、昼用のエントランス側でゲストを迎えるのが、現代美術家・西野達による《What if someone finds out?(バレたらどうする?)》。シンガポール〈マーライオン・ホテル〉のアートプロジェクトなどで知られる西野は、屋外のモニュメントを室内に取り込むなど、公共空間の常識を覆すような大掛かりなインスタレーションで知られる。街灯につながれていたベスパを、街灯ごと引っこ抜いて高さ5メートルを超える天井から吊るした作品は、圧巻のスケールだ。
巨大な作品だけでなく、写真家・川島小鳥の作品《BABY BABY》が展示されたロフトスペース、2人用の席としては類を見ないほどミニマムな「懺悔室」という名の個室など、さまざまな空間が連なり、リザーブする席ごとに、まるで違う店のように感じる演出が見事だ。
窯で焼く肉料理を中心とする料理も、またアートさながら。イタリア版ローストポーク、ポルケッタは、火の勢いをまとうかのような豪快さ。サラダはトマトやパプリカでつくる「赤」、黄ニンジンとファルファッレでつくる「黄」など単色で構成し、皿の上は絵画のような美しさである。アート作品を軸にした空間に紳士淑女が集い、テーブルの上に皿が運ばれて初めて、「パビリオン」が完成するのだ。
窯で焼く肉料理を中心とする料理も、またアートさながら。イタリア版ローストポーク、ポルケッタは、火の勢いをまとうかのような豪快さ。サラダはトマトやパプリカでつくる「赤」、黄ニンジンとファルファッレでつくる「黄」など単色で構成し、皿の上は絵画のような美しさである。アート作品を軸にした空間に紳士淑女が集い、テーブルの上に皿が運ばれて初めて、「パビリオン」が完成するのだ。