ファッション、アート、建築を越境する〈Off-White〉ヴァージル・アブローの思考を探る。|石田潤の In the mode | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ファッション、アート、建築を越境する〈Off-White〉ヴァージル・アブローの思考を探る。|石田潤の In the mode

ファッション界で今、最も話題に上がる人物といえば、つい先日、ルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック・ディレクターへの就任が発表された〈Off-White〉のヴァージル・アブローだろう。カニエ・ウェストのクリエイティブ・ディレクターという華やかな経歴の持ち主は、イリノイ工科大学大学院で建築を学んだという過去も持つ。そんな多才な彼が、今度はアートの世界に足を踏み入れた。記念すべき初の個展発表の場は、村上隆が主宰する〈カイカイキキ・ギャラリー〉。果たして、ヴァージルはそこで何をみせたのか?

(CON)TEMPORARYとわざと綴りの一部を消したサイン。 “ALL SIGNS ARE CONTEMPORARY” 2018年(Neon 5628 x 250 x 155 mm)
――ファッションに関心を持ったのは、建築を学んだ後ですか?

そうですね。ファッションといっても、ストリートファッションです。スケートボーディング、音楽カルチャー、僕はそこに参加し、ファッションの違った学び方をしました。

――展示作品の一つに、ミース・ファン・デル・ローエの〈バルセロナ・パビリオン〉の映像作品がありました。

自分で撮影しました。美意識を集約し深めるために、建築的に重要と思われる場所を回ったんです。〈バルセロナ・パビリオン〉では、アフリカ出身の若者たちをそこに連れてゆき撮影しました。建築空間は人がいて初めて存在するものだと思いますが、もともとそこにいないはずの人々が空間内にいたらどう感じるかがテーマです。この建物はモダニズム建築の歴史において、とても重要なものです。この空間をアートのセッティングとして使いました。ファッション・フィルムではありません。
右側の壁にかかるグラフィティは、黒いペインティング作品の背面に描かれたグラフィティと同じもの。(左から)“non-cable channel” 2018年(Digital Media LED Panel & Chair 8 EDITIONS
 2040 x 920 x 257 mm)、Hedera 2 2018年(Acrylic spray on canvas 5522 x 1706 mm)
――作品の前に置かれた椅子はオリジナルですか?

3年前にデザインした「フレーミング・グレー」プロジェクトの一つです。家具制作の経験もあるんですよ。2019年にパリで家具の展覧会と椅子作りのワークショップをやる予定です。家具はエディションのあるアートピースとして発表します。

――IKEAともコラボレーションするのですよね?

進行中です。アパートメントを初めて借りる若者が必要とする家具を作ります。
空のビルボードをヴァージルが撮影。「ビルボードは数日で埋まってしまうが、写真に撮ったこれはずっと空のまま」とヴァージル。 “a mere image” 2018年(Screen print on chrome 3100 x 1430 mm)

――これまでに建築のプロジェクトを手がけたことはありますか?

大学院修了後、住宅を作る建築事務所で働いたことがあります。学生時代には高層ビルの構造を学んでいましたから、当時の目標はシカゴの〈SOM〉(スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル)で働くことでした。

それからカニエ・ウェストに出会い、彼のクリエイティブ・ディレクターになり、そして〈Off-White〉を始めました。〈Off-White〉の旗艦店のデザインは、〈Family NY〉という会社と一緒に自分自身でやっています。

建築は今もなお僕の職業であって、ファッションデザイナーやアーティストである以前に自分は建築家だと思っています。ファッション、アート、すべての仕事の考え方のベースにあるのは建築的思考です。若い頃に「建築とはなにか」という教科書を読んだ時、最初は「建築家はすべてをデザインする」、でも真ん中あたりにくると「家だけをデザインする」になっていました(笑)。僕は、「建築家はすべてをデザインする」という定義を好みます。アートも家具も紙の飛行機も作れる。それが建築家です。