川久保玲が初めて衣装デザインを手掛けたオペラ|石田潤のIn The Mode
上演前から注目を集めていたウィーン国立歌劇場の新作オペラ『オルランド』が、ついにベールを脱いだ。女性クリエイターにより製作された異例の作品の衣装デザインを手掛けたのは、コム・デ・ギャルソンの川久保玲。果たしてどのようなクリエイションが展開されたのか?
川久保がコレクションのテーマを明らかにすることは異例であり、オペラへの強い意気込みが感じられた。そしてオペラに登場した衣装は、こうしたコム・デ・ギャルソンの世界観を引き継ぎながらも、『オルランド』のためだけに作られたもののように見えた。オルランドが着用した複数の袖が配されたジャケット、エリザベス女王の本来中に隠れて見えないファーチンゲールが露出したスカート、複数のリボンがついたフェミニンなロシア皇女のドレス……。全ての服が登場人物のキャラクターを表し、強いクリエイションを貫くことで、奇想天外にも思える物語世界に逆にリアリティをもたらした。
『オルランド』
2019年12月8日〜20日、ウィーン国立歌劇場にて全5公演。
作曲:オルガ・ノイヴィルト、演出:ポリー・グラハム、脚本:キャサリン・フィルー、オルガ・ノイベルト、指揮:マティアス・ピンチャー、衣装:コム デ ギャルソン。出演:ケイト・リンゼー、フィオナ・ショウ、エリック・ジュレナス、コンスタンス・ハウマン、レイ・メルローズ、ヴィヴィアン・ボンド、アグネタ・アイヒェンホルツほか。
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。