〈メゾン マルジェラ トウキョウ〉がミュージアムに変貌|石田潤のIn The Mode | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

〈メゾン マルジェラ トウキョウ〉がミュージアムに変貌|石田潤のIn The Mode

ミュージアムピース級の服が並ぶ〈メゾン マルジェラ トウキョウ〉で開催中の『アーティザナル』展。ジョン・ガリアーノによるメゾン マルジェラの“今”が一望できる展示となっている。

「アーティザナル」のコーナーに続いて展示される2019年秋冬「デフィレ」コレクション。展示の脇には商品化されたアイテムも並ぶ。
2019年秋冬「デフィレ」コレクションのインスタレーション。「アーティザナル」のコンセプトを受け継ぎながら、よりシンプルなものに。
「アーティザナル」のコーナーに続いて展示される2019年秋冬「デフィレ」コレクション。展示の脇には商品化されたアイテムも並ぶ。
2019年秋冬「デフィレ」コレクションのインスタレーション。「アーティザナル」のコンセプトを受け継ぎながら、よりシンプルなものに。
もうひとつの注目すべき点は、このシーズンから打ち出された「デカダンス」というコンセプトだ。もともと「デカダンス」は、ガリアーノが得意とするものであり、かつて手掛けていた自らのブランドには常に19世紀末的デカダンスの香りが漂っていた。しかしメゾン マルジェラのコンセプトとなった「デカダンス」は、これとは異なる。それは過剰な情報に溢れ、フェイクとリアルの境目がなくなったデジタルエイジのデカダンスだ。会場で配布されている冊子にも記載されているが、ガリアーノは現代のデカダンスについて次のように述べている。

「世の中にすごいエネルギーが満ち溢れている(略)そこで思いついたのがデカダンスというアイデアだった。そして私たちは、今世の中で起こっていることはまさに過剰、改ざん、衰退の表れであると確信したんだ。」
店舗全体が展覧会会場に。ショーの映像も見ることができる。
ショー会場を一部再現した展示では、鏡面に背景と服が映り込み、像が増殖してゆく。
スカートをトップに、クロンビーコートをショーツにカッティングしたルック。
店舗全体が展覧会会場に。ショーの映像も見ることができる。
ショー会場を一部再現した展示では、鏡面に背景と服が映り込み、像が増殖してゆく。
スカートをトップに、クロンビーコートをショーツにカッティングしたルック。
今回の展示でも再現されているが、2019年春夏「アーティザナル」コレクションのショー会場は、天井と壁がクライン・ブルーに染められたプードルをフィーチャーしたデジタルプリントで覆われ、さらにそれを床の鏡面が乱反射した。こうして作られたリアリティとフェイクが入り乱れる空間に登場するのは、トップスにカッティングされたスカートやショーツにカッティングされたコートなど、カッティング(ガリアーノはこれを「デカダン・カッティング」と呼ぶ)により改ざんされ、新たなリアリティを纏った服だ。性差に続き、リアル/フェイクの区別も流動的(フリュイド)となっている。そしてこのコンセプトはプレタポルテ、プレ・コレクションにも引き継がれ、過剰さが行き過ぎると今度はミニマルへと方向転換してゆくように、よりシンプルな服へと表現を変えてゆく。
ジャケットの前身頃に、テクニカルオーガンザを重ねたコットンジャージーのTシャツを融合したトップ。背面のI♡NYのエンブレムが鏡面に映り込む。
ジョン・ガリアーノがメゾン マルジェラのクリエイティブ・ディレクターとなってから5年が経った。相異なる世界観を持つもうひとりの天才デザイナーの登場は、就任当初は物議を醸したものの、“服作りの可能性の探究”という考えのもとに両者は繋がり、今となっては誰よりもふさわしい後継者だったようにも思える。今回の展覧会は、「ガリアーノによるメゾン マルジェラ」が確立したことの宣言のようにも見えた。

メゾン マルジェラ「アーティザナル」展-「アーティザ ナル」Co-ed コレクション デザインド バイ ジョン・ガリアーノ 2019 年春夏

〈メゾン マルジェラ トウキョウ〉
東京都渋谷区恵比寿南2-8-13。〜12月11日。12時〜20時。

石田潤

いしだ じゅん  『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。