デザインを主張する家具の価値を体感させる〈リヒト〉|土田貴宏の東京デザインジャーナル | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

デザインを主張する家具の価値を体感させる〈リヒト〉|土田貴宏の東京デザインジャーナル

歴史的な逸品から、80~90年代の隠れた名作、そして現在の気鋭デザイナーの作品まで。インテリアについての新しい視点を提案するギャラリー〈リヒト〉がオープン。

左の椅子はヘリット・トーマス・リートフェルトによる晩年の代表作《ステルマンチェア》。
「自分自身は、ものが生まれた文脈や歴史にあまり深く入り込まないことを意識してるんです。最低限の知識はもつようにしていますが、知識を重視しすぎて自分の感覚を失ってもいけない。自分の役目は、ものを選び、ディスプレイやコーディネートを考えて、接客やウェブサイトの写真で伝えていくことだと思います。すごく詳しいお客さんも多いので、教えてもらうことも多いんです」

〈ハイク〉のプレゼンテーションのレベルの高さは定評があったが、幅広いアイテムを扱う〈リヒト〉はいっそう鋭敏なセンスを感じさせる。二俣公一が手がけた、全体を包む白い光が印象的なインテリアを背景に、今まで気づかなかったようなデザインの魅力に目を開かされる。
中央の椅子は内田繁の《オカザキチェア》のグレー&ブラック・バージョン。
内田繁による椅子《セプテンバー》は、幾何学的な図形を組み合わせてデザインされた。NYのメトロポリタン美術館にも所蔵されている。
中央の椅子は内田繁の《オカザキチェア》のグレー&ブラック・バージョン。
内田繁による椅子《セプテンバー》は、幾何学的な図形を組み合わせてデザインされた。NYのメトロポリタン美術館にも所蔵されている。
「現在のラインアップは、黒、グレー、白の3色と、四角や丸といった基本的な形を基調にしています。90年代のモノトーンブームじゃないけど、無機質感を出して新しい場所のイメージを明確にしたかった。今後はヴィンテージ家具が増え、この状態をベースに色が加わっていきます」

「今、試行錯誤しているのは、ダイニングやリビングといったインテリア寄りのコーディネートをしないこと。家具を家に置こうと思ってもらうには住空間での設えを提案することが大切ですが、個々のデザインの特徴をしっかり伝えることも心がけていて、そのバランスには気を使っています。大人のお客さんに買ってもらわないと家具は根づきません。それは〈リヒト〉の裏テーマ。そうならないと、日本のデザインの環境が世界からどんどん遅れてしまう」
個性あふれる家具が多いが、全体としての調和を感じさせる空間になっている。
左の階段状のプロダクトのように、〈リヒト〉のオリジナル家具はミニマルな造形のものが多い。右のバスケットは藤城成貴の《ノット》。
個性あふれる家具が多いが、全体としての調和を感じさせる空間になっている。
左の階段状のプロダクトのように、〈リヒト〉のオリジナル家具はミニマルな造形のものが多い。右のバスケットは藤城成貴の《ノット》。
今年は、倉本仁、二俣公一、藤城成貴といった現代の日本人デザイナーのエディション作品を発表する予定もある。こうした活動は、欧米のデザインギャラリーに近いものだ。数量限定で販売される実験的なデザインが、量産されるプロダクトの原点になるケースは、海外ではますます増えている。

「エッジの効いた、遊び心のある、デザイナーの気持ちが込められたものを出していきます。デザインギャラリーが定着していない日本では、メーカーからは出せないような作品をプロダクトデザイナーが発表するのは簡単ではありません。デザイナーの名前や個性が、もっとメジャーになるきっかけを作りたい」

現在は、デザインという言葉がとても幅広い場面で使われるようになり、その意味合いがぼやけてきた面もある。そんな状況の中で、〈リヒト〉が扱うアイテムは1点1点が作り手の明確な意志と意図に基づく、デザインの本来の意味を思い出させるものばかりだ。さらに、単に過去の価値を振り返るだけでなく、価値を更新していこうという姿勢も持ち合わせる。ユーザーにとっても、今後の世代のデザイナーにとっても、意義のある場所になりそうだ。

〈LICHT〉

2018年12月オープン。今後は企画展も開催予定。東京都目黒区青葉台3-18-10 カーサ青葉台2F TEL 03 6452 5840。12時~18時。火水休。アポイント制(ウェブサイト参照)。

土田貴宏

つちだたかひろ  デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。