デンマークの感性から生まれた、レストラン〈INUA〉の椅子《JARI》。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

デンマークの感性から生まれた、レストラン〈INUA〉の椅子《JARI》。

デンマークのレストラン〈noma〉でシェフを務めたトーマス・フレベルを迎え、東京・飯田橋にオープンした話題店〈INUA〉。このレストランのための椅子《JARI》をデザインしたOEOスタジオのトーマス・リッケと、製作を担当したクルーガーブラザースのヨナス・クルーガーが、その背景にあるストーリーを語った。

デンマークの木工技術を生かしながら、現代的な感覚を取り入れた《JARI》アームチェア。
《JARI》アームチェア
デンマークの木工技術を生かしながら、現代的な感覚を取り入れた《JARI》アームチェア。
《JARI》アームチェア
レストラン用の椅子は、一般的なホームユースの家具に比べて、格段に高い耐久性を要するという。そのレベルの強度を、〈INUA〉の空間にふさわしい上質さやエレガンスと調和させるのも簡単ではなかった。

「不安定な椅子では快適な体験は得られないし、メンテナンスが必要なのはレストランにとっても負担になります。《JARI》アームチェアのデザインは、短期間のうちに様々なハードルを超えなければならないプロジェクトでした」(トーマス・リッケ)
デンマークの木工工房〈クルーガーブラザース〉は1世紀以上の歴史を持ち、現在も高度な手仕事を継承している。
この《JARI》アームチェアの製作を、リッケはデンマークの木工工房〈クルーガーブラザース〉に依頼した。この工房は1886年に創業し、現在は5代目のヨナス・クルーガーが率いている。OEOスタジオが彼らのショールームをデザインするなど、クルーガーとリッケの交流は長く、気心の知れた仲だった。彼は今回のコラボレーションについてこう語る。

「背もたれとアームレストのジョイントに十分な強度をもたせ、アームレストを細めに仕上げるのが難しかったですね。ここは椅子の中でも特に負荷のかかる部分です。デンマーク人の私たちにとって椅子とは、自分の人生よりも寿命が長く、子どもたちの世代に受け継がれ、財産になりえるもの。日本もそうですよね? そのためにふさわしい椅子ができたと思います」(ヨナス・クルーガー)
《JARI》シリーズのアームチェアとテーブル。写真の〈INUA〉で採用されたアッシュ材仕様のほか、オーク材をクリア塗装で仕上げたタイプなどもある。
近年、デンマークの木工家具メーカーは、国内の工場や工房を閉鎖して、より製造コストの低い国外に製造拠点を移す動きがあるらしい。そのようなメーカーで経験を積んだ家具職人が、自分たちの工房で働くケースも多いのだとクルーガーは話す。木工職人を志す若者も増えているそうだ。こうした変化についてリッケは語る。

「ここ数年はイタリアのメーカーさえも、伝統を受け継ぐデンマークの家具づくりを参考にしています。私たちの仕事は、自分たちの視点で伝統を解釈して、現代のデンマークデザインを作り上げること。〈クルーガーブラザース〉は、20世紀の名作家具を作り続けるブランドとも、ニューノルディックと呼ばれる新興ブランドとも違う、新しいタイプのブランドだと思います」(トーマス・リッケ)

クルーガーは、脈々と進歩を重ねてきたデンマークのクラフツマンシップと、長い年月の中で磨かれて美しい丸みを帯びた玉砂利のイメージが重なると語る。《JARI》アームチェアは、北欧の優れた家具の系譜に位置づけられる、現代ならではの椅子ということだ。
OEOデザインのトーマス・リッケ(右)と、クルーガーブラザースのヨナス・クルーガー。 photo_Manami Takahashi

●〈INUA〉のためにつくられた《JARI》シリーズ

2019年春よりアクタス店舗にて販売を開始。アームチェア239,000円〜、テーブル(日本未展開)。2月17日まで開催の〈アクタス・六甲店〉での『101脚のイス』展にてアームチェアのサンプルを見ることができる。東京では、3月9日より〈アクタス・青山店〉で開催される『SCANDINAVIA DESIGN TOKYO』で先行販売を予定。

●〈noma〉のためにつくられた《ARV》シリーズも同時期に登場

2019年春よりアクタス店舗にて販売を開始。アームチェア200,000円〜、テーブル(日本未展開)。デザインは新生〈noma〉のインテリアデザインを手がけたスタジオ デビッド サルストラップ。《JARI》シリーズ同様に、クルーガーブラザースが製造を手がける。3月9日より〈アクタス・青山店〉で開催される『SCANDINAVIA DESIGN TOKYO』で先行販売を予定。