知られざるアルヴァ・アアルトに迫る展覧会。
北欧デザインの中でも特にファンの多いアルヴァ・アアルト。彼の造形の秘密を探る展覧会が開かれています。アアルトの家具でくつろげる「アアルト ルーム」もある、スペシャルな内容です!
積層合板の曲げ木のレリーフの隣にはジャン(ハンス)・アルプやフェルナン・レジェら、アアルトと同時代のアーティストたちの作品が並ぶ。アアルトはモホイ=ナジ・ラースローをはじめとするモダンアートの作家たちとも親しく交流していた。積層合板のレリーフや有名な《アアルト ・ベース》には明らかにアルプの影響が見られる。
アアルトが妻アイノと設立したインテリアブランド、アルテックに併設されたギャラリーではアレキサンダー・コールダー、ポール・ゴーギャン、ピカソらの展示も行われていた。この時代には、建築・デザインとアートとの垣根を超えることで互いにインスピレーションを得ることがよく行われていたのだ。
さらに進むと、建築模型の数々。アアルトのスタジオでデザインや構造の検討のために制作されたこれらの模型からは、彼の実験や思考の跡がうかがえる。たとえば〈ヴォクセンニスカの三つ十字の教会〉の模型は天井部分を上下逆さまにしたもの。アアルトは鏡を使って模型のカーブした天井に光をあて、それが反射する様子から音がどのように響くかを類推した。光と音が同じような進み方、反射の仕方をすると仮定すると、このようなシミュレーションで音響を推し量ることができると考えたわけだ。
会場に並ぶ写真は写真家、アルミン・リンケがこの展覧会のためにアアルト建築を撮りおろしたもの。北方の柔らかい光にアアルトの造形が浮かび上がる。繊細な目が、実際にその建築を見た人も見逃していたかもしれないディテールをとらえている。