DESIGN
北欧デザインの普遍美が心に沁みる展覧会へ。
『カーサ ブルータス』2018年10月号より
September 12, 2018 | Design | a wall newspaper | photo_Anna Danielsson / Nationalmuseum Stockholm text_Takahiro Tsuchida
60年代からスウェーデンで活動するインゲヤード・ローマン。日本初の個展は、静かなデザインの魅力にあふれる。
インゲヤード・ローマン本人を『カーサ ブルータス』が最初に取り上げたのは、おそらく2002年10月号。そのインタビューでは、日本の造形への愛着、シンプルな器への一貫した思い、そして生活すべてがインスピレーションの源であることが語られた。そんな彼女の本格的な展覧会が、ついに東京で実現。この規模の展示は日本初で、自身としても喜ばしい出来事に違いない。
「静のデザイン」と「動のデザイン」があるとしたら、インゲヤードは明らかに前者だろう。1960年代に活動を始めて以来、そのアプローチは不動と言っていい。簡素な形、限られた色、澄んだ美しさ。近年、発表された木村硝子店やイケアなどのプロダクトにも、その作風は当然貫かれた。
「静のデザイン」と「動のデザイン」があるとしたら、インゲヤードは明らかに前者だろう。1960年代に活動を始めて以来、そのアプローチは不動と言っていい。簡素な形、限られた色、澄んだ美しさ。近年、発表された木村硝子店やイケアなどのプロダクトにも、その作風は当然貫かれた。
ちなみに02年の取材はストックホルムにあるインゲヤードのスタジオで行われたが、彼女はスウェーデン南部にも自宅兼アトリエがある。その古い学校だった建物をリノベーションしたのは、今回展示デザインを担当するクラーソン・コイヴィスト・ルーネだ。
人々が変化に翻弄される現在こそ、彼女の揺るぎなさはいっそう輝く。いいデザインに特別な何かは必要ないという真理を、この展覧会は実感させてくれるはずだ。
人々が変化に翻弄される現在こそ、彼女の揺るぎなさはいっそう輝く。いいデザインに特別な何かは必要ないという真理を、この展覧会は実感させてくれるはずだ。
日本・スウェーデン外交関係樹立150周年 インゲヤード・ローマン展
9月14日〜12月9日。〈東京国立近代美術館工芸館〉東京都千代田区北の丸公園1-1 TEL 03 5777 8600。10時〜17時。月曜休(9月17日、24日、10月8日は開館。翌日休)。入館料600円。
インゲヤード・ローマン
1943年ストックホルム生まれ。コンストファク(スウェーデン国立美術工芸デザイン大学)などで学び、1960年代後半から陶磁器の制作やガラスのデザインを開始。〈スクルフ〉や〈オレフォス〉のデザイナーも務めてきた。多くのテーブルウェアのブランドにデザインを提供している。