ロン・ギラッドの新作ミラーが映す、デザインの理想郷。|土田貴宏の東京デザインジャーナル
「1960~70年代、イタリアのデザインが自由で革新的だったのは、それをブランドも後押ししたから。しかし最近は……」。デザイナーのロン・ギラッドは、デザインの黄金期を振り返りながら、さらに新しい一歩を踏み出そうとしている。
「〈ダネーゼ〉同様、〈カッシーナ〉の黄金期もすばらしかった。60~70年代のイタリアのブランドに共通することだけど、十分にリサーチを重ね、リソースを探求し、実験を試みる時間があった。彼らがデザイナーの創造性を後押したんだ。現在は、クオリティーを追求する点は同じでも、開発のペースがあまりに早く、価格の制約も大きい。いろいろな国で安価な家具が作られるようになり、毎年4月にはサローネという締め切りがあるからね」
ロン・ギラッドがこう話すように、彼は家具産業の現状に問題意識を持っている。過去の遺産を顧みずに、未来ばかりを志向するデザインにも否定的だ。
「あるデザイナーが『過去は忘れて、未来をデザインしよう』と主張していたけどバカげてる。アイザック・ニュートンでさえ『私が遠くを見ていたとしたら、巨人の肩に乗ったからだ』と言っているんだ」
ロン・ギラッドがこう話すように、彼は家具産業の現状に問題意識を持っている。過去の遺産を顧みずに、未来ばかりを志向するデザインにも否定的だ。
「あるデザイナーが『過去は忘れて、未来をデザインしよう』と主張していたけどバカげてる。アイザック・ニュートンでさえ『私が遠くを見ていたとしたら、巨人の肩に乗ったからだ』と言っているんだ」
ロン・ギラッドは、単にアーティスティックで遊び心に富んだデザインを追求しているのではない。彼が理想とするのは、時間をかけてデザインしたものが、高いクオリティーで生産され、その価値がわかる人々によって大切に使われること。そんな循環の中で、デザインが1歩ずつ意味のある革新を遂げていくことだ。『フラグメンツ・オブ・ライフ』は、ロン・ギラッドが思い描くもの作りのユートピアを、自身のプロダクトを通して実感させる機会でもある。
ロン・ギラッド
1972年、イスラエルのテルアビブ生まれ。自国でデザインを学んだ後、2001年にニューヨークに移ってスタジオを設立。現在はテルアビブとミラノを拠点に活動し、家具や照明器具のデザインを中心に活躍している。『Ron Gilad / Fragments of Life』
〈カッシーナ・イクスシー青山本店〉
東京都港区南青山 2-12-14 ユニマット青山ビル 1階 TEL 03 5474 9001。11時~19時。水曜休。~7月24日。入場無料。
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土田貴宏
つちだたかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。