アップル〈WWDC〉に潜入、真鍋大度が見た未来とは? | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

アップル〈WWDC〉に潜入、真鍋大度が見た未来とは?

アップル主催のイベント〈WWDC〉にライゾマティクスリサーチの真鍋大度が初参加! 彼の目を通して、アップルが提示する未来をひもとく。

Q AR関連の発表はどうでしたか?

最近、話題のVR(仮想現実)とAR(拡張現実)は似た技術だと思われがちですが、VRはどちらかというと仮想の映像世界をいかにリアルに感じさせるか、ということが重要であるのに対して、ARは現実世界にコンピューターグラフィックスや音などを追加することで現実を拡張するという技術です。

僕らはVRのプロジェクトはほとんどやっていなくて、ARにフォーカスしてきました。その中でもリオのオリンピックの閉会式(フラッグハンドオーバーセレモニー)や『NHK紅白歌合戦』でのPerfumeのパフォーマンスなど、生中継のARが中心でした。ナビゲーションなどのサービスを作るというよりは、演出家やパフォーマーの頭の中にある想像を鑑賞者と共有するためにARを使っている感じですね。

これまでのスマートフォン用のARは厳密には一人ひとりが違った空間にいるため作り出せる共有体験が限定的でした。それが新たに複数のiPhone/iPadで、同時に同じARの世界を共有できるようになる新しい技術「ARkit2」には凄い可能性を感じたとCEOのティム・クックさんにも伝えました。僕は普段からダンスとかパフォーマンスをどうやれば違った形で見せられるかを考えているので「新しい参加型のパフォーマンスが作れそうだな」といくつか思うことがありました。
〈WWDC〉では、LEGOのイノベーション担当ディレクター、マーティン・サンダースが「LEGO AR City」を壇上で実演した。
Q 「ARkit2」と言えば、レゴ社が開発中のアプリが評判でしたね。

A  あれは凄かった。結局、技術だけあってもコンテンツがなければ意味がないけれど、レゴのアプリはストーリーもあって、ARでやる意味もありましたね。

Q 今回の発表を通して、真鍋さんの目にはどんな未来が見えてきましたか?

A  「Screen Time」も、今はiPhone/iPadの使いすぎを抑制することが主な目的だけれど、将来はより良い生活を提案するみたいな形に進化するかもしれないですね。これから先は機械学習などを通して、実空間で人間が次に何をやろうとしているかを予測することが熱くなってきます。たとえば開発者は同じ作業を3回も繰り返すと苦痛に感じてしまうので「前にもこういうコードを書いたな」とか「前も同じような作業をしたな」と思うタイミングで残りの部分を示唆してくれるとか、そういったものはパソコンの中から生活空間まで、今以上にどんどん広がっていくのではないでしょうか。
ティム・クックCEOと2ショット。
Q 〈WWDC〉への参加は今回が初めてと伺いました。

A  アートや音楽寄りのイベントやフェスには参加しているのですが、技術系の大きなイベントはストリーミング放送での視聴などオンライン参加で済ませてしまうことが多かったので、〈WWDC〉への参加は今回初めてです。全員が開発者、つまり自分と同業者で、スキルセットも近く、アップルに対して求めているものやどんな発表がされるかというワクワク感も含めて、自分に近い人たちばかりがこれだけ揃っているイベントに生で参加するという体験に震えました。普段はプログラムを書いて部屋にこもっているような人たちが、勢揃いしている。終わった後にデベロッパー同士で議論をするのも面白いと思いました。

Q ご存知の開発者はいましたか?

A  MorpholioのToru Hasegawaさんと遭遇しました。それからBjorkなども採用した「Reactable」という作品などでよく知られているMarcos Alonsoにも遭いました。実は彼はメディアアートのコミュニティでイケている人で、僕らの会社にも遊びに来てくれたこともあります。その彼が2013年からアップル社のヒューマン・インターフェイス・デザイナーとして働いていて、「Designing Fluid Interface」というiPhone Xの操作インターフェースの裏側の考え方などを語るセッションに登壇していました。タッチスクリーン操作などの方法を15年以上研究し続けてきた人で、セッションの内容もかなり面白いです。
「Designing Fluid Interface」セッションにて、アップル社のヒューマン・インターフェイス・デザイン・チームのひとりとして説明を行ったMarcos Alonso。
Q 今回のWWDCにはアップルからスカラーシップ制度で招待された学生さんたちもいたようですが、若い人たちに伝えたいことはありますか?

A  自分も大学などで講義をする身なのですが、学生さんなど若い人にはぜひいろんな体験をしてもらいたいですね。今はチャンスがあっていいものをつくったらすぐに世界に認められる時代である一方で、検索をすれば、やる前から結果がわかった気になれる時代。日本にいると、どうしても閉じたコミュニティでわかった気になっていることが多い。でも、海外に行くと同じ技術系のコミュニティでも多様性があり、人種やジェンダーのバランスも違います。日本とは違う世界を肌で感じてみるのも良いかもしれません。
2017年に完成したばかりのアップル新本社「Apple Park」も見学。

真鍋大度

東京を拠点としたアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ。2006年、ライゾマティクス設立。2015年よりライゾマティクスの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うライゾマティクスリサーチを石橋素氏と共同主宰。身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作品を制作。注意深く観察することにより発見できる現象、身体、プログラミング、コンピュータそのものが持つ本質的な面白さや、アナログとデジタル、リアルとバーチャルの関係性、境界線に着目し、デザイン、アート、エンターテイメントの領域で活動している。