ブルーノ・ムナーリの秘密を探ろう!|青野尚子の今週末見るべきアート | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ブルーノ・ムナーリの秘密を探ろう!|青野尚子の今週末見るべきアート

絵本はよく知られているけれどグラフィック・デザイン、プロダクト・デザイン、建築、彫刻、テキスト、子供の造形教育と幅広く活動していたブルーノ・ムナーリ。彼の初期からの作品が見られる回顧展が〈神奈川県立近代美術館 葉山〉で開催中です。

『みどりずきんちゃん』のためのイラストレーションとレイアウト。草や葉がスタンプで表現されている。
ムナーリの絵本で育ち、長じて認知発達心理学を学んだアルベルト・ムナーリは展覧会のオープニングに合わせて来日、講演で父の創作の秘密を語った。

「父はいつも、結果より道のりを重視していました。『結果を引き出すために途中を急いではいけない。プロセスを楽しまなくてはダメなんだ』と言っていたのを覚えています。答えではなく質問が大事だとも考えていました。ある哲学者の言葉に『質問によって開かれた世界は、答えによって閉じられる』というものがあります。父がよく投げかけていた質問は『他に違う方法がないだろうか?』というものでした」(アルベルト・ムナーリ)
《木々》。幾度か来日したムナーリは表意文字である漢字に興味を持っていた。
その「違う方法」を模索する中から生まれたのが《直接の映写》だ。この作品のきっかけになったのは1950年代のはじめ、ムナーリが当時まだ珍しかったスライド・プロジェクターを買ったことだった。

「家じゅうのあらゆるスライドを投影してみたあと、この機械でもっと何かできないか、という疑問が父の頭をよぎりました。そこで次に父はセロファンや玉ねぎの皮、プラスチックのかけらなど、スライド以外のいろいろなものを投影してみたんです。そのまま映すだけでなく、引き伸ばしてみたりといろいろな実験をしていました」(アルベルト・ムナーリ)
《短い訪問者のための椅子》。早く帰って欲しいお客さんに出す……、というイジワルはやめましょう。
ムナーリはここでも結果を求めていない。

「父は美しいものを作ろう、とか、正解を求めていたわけではなく、自由な発想で実験を楽しんでいました。こうした実験や素材との対話を重ねていけば答えは勝手に出るものだと考えていたのです」(アルベルト・ムナーリ)

複写機を使った「オリジナルのゼログラフィーア」。同じものをコピーするはずの機械を使ってたった一つしかないものを作る。
今、どこのオフィスにもある複写機が出始めたときもムナーリは飛びついた。1960年代、ミラノの国際見本市で複写機を見たムナーリはさっそく試させてもらう。

「コピーするものを動かしちゃだめですよ、と言われたのですが、わざと動かしてみるんです。そうしてできたのが『ゼログラフィーア』のシリーズです。父の作品はこんな冒険からも生まれてきました」(アルベルト・ムナーリ)
右は《ペアーノ曲線の色彩》、左は《ペアーノ曲線の彩色案》。ペアーノ曲線とはイタリア人数学者ジュゼッペ・ペアーノが発見した理論にもとづくもの。