最近、見かけた照明のテクニック。|土田貴宏の東京デザインジャーナル | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

最近、見かけた照明のテクニック。|土田貴宏の東京デザインジャーナル

海外での取材中などに、しばしば見かける洗練された照明の使い方。中には自宅で応用できそうなものもあります。『カーサ ブルータス』3月号の照明特集に合わせて、そんなアイデアの数々を読み解きます。

ニューヨークMETでの『Rei Kawakubo / Comme des Garçons Art of The In-Between』展

天井の照明が、展示空間のデザインの一部として重要な役割を果たしている。
ニューヨークのメトロポリタン美術館で昨年開催されて大きな話題になった『Rei Kawakubo / Comme des Garçons Art of The In-Between』展。シェードやディフューザーも設けず、蛍光灯による強めの光でユニークな空間と作品を浮かび上がらせた。この展示空間も川久保玲によるもので、会場全体を均一に照らすライティングは美術館にとって異例だったという。最近の住宅では蛍光灯が嫌われがちだが、こうした空間を体験すると、無機質な白い光の魅力を生かす方法が様々にありそうな気がしてくる。

ニューヨーク〈ヴィトラ〉のポップアップ

シンプルなペンダントライトも、高さを変えていくつも吊り下げると新しい魅力が生まれる。
昨年春、ニューヨークにオープンしていた〈ヴィトラ〉のポップアップショップにて、フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトによる〈アルテック〉の製品をディスプレイしたコーナー。ペンダントライトは彼が1952年にデザインした《A110》で、2つの筒を組み合わせた構造により、直接光で真下を照らしながら、上側に漏れる光が天井から間接光を広げる。シンプルなランプだが、いくつも並ぶことで持ち味が際立ち、こうして高さを変えて吊るすとシャンデリアのような効果も生まれる。《A110》は価格も比較的リーズナブルなので、決して非現実的な使い方ではない。

ミラノサローネでの〈カール・ハンセン〉の展示

壁際のかなり低い位置でペンダントライトを使っている。どの方向から見ても美しい照明ならではのテクニック。
昨年のミラノサローネに出展したデンマークの家具ブランド〈カール・ハンセン〉の展示では、アルネ・ヤコブセンやヴェルナー・パントンらによる北欧の名作照明が空間を引き締めていた。この壁際に吊ってあるのはデンマーク人建築家のヴィルヘルム・ラウリッツェンが1940年代にデザインした《VL45》。乳白ガラス越しのソフトな光と、壁面のアートやローテーブルとのコントラストが美しい。かなり低い位置に吊るし、周囲の色使いを生かすように白色の電球を使っているのがスタイリングの特徴。吹きガラスのシェードのふっくらした形状も、クラフツマンシップが生きた家具の曲線と調和している。

ミラノデザインウィークでの〈マターメイド〉展

フィリップ・マルインのシャンデリアのほか、イギリスのフェイ・トゥーグッドの新作照明コレクションも発表された〈マターメイド〉の昨春のエキシビション。 公式サイト
気鋭のデザイナーを起用して注目が高まっているニューヨークのブランド〈マターメイド〉が、昨年のミラノデザインウィークで発表したシャンデリア《ARCA》(左)。いまの感覚と技術を生かし、伝統的なシャンデリアを解釈し直して、現代の空間にしっくりくる存在感へと高めている。トム・ディクソンのもとで経験を積んだカナダ出身のデザイナー、フィリップ・マルインがデザインした。ミニマルなフレームとシンプルな光源を合わせるのは、数年前にマイケル・アナスタシアデスが注目されるようになって以来の大きなトレンド。この展示では、エントランス正面の最も目を引く場所で、テクスチャーのある赤い壁をバックにアイコニックに使われた。

土田貴宏

つちだたかひろ  デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。