ジョナサン・アイブに聞く《iPhone X》のデザイン哲学とは? | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

ジョナサン・アイブに聞く《iPhone X》のデザイン哲学とは?

『カーサ ブルータス』2017年11月号より

9月12日のスペシャルイベントで発表された《iPhone X(テン)》は、今までにない進化を遂げた。新たなデザインやテクノロジーとの関係について、ジョナサン・アイブに独占インタビューを敢行!

5.8インチディスプレイを採用した《iPhone X》。ホームボタンが廃止され、顔認識でロック解除をする「Face ID」が新たに採用された。ワイヤレス充電にも対応。112,800円〜。10月27日予約開始、11月3日発売。
Q 《iPhone X》は現時点における究極で、デザインはかつてないほどシンプルになったと感じたのですが、テクノロジーの進化がより純粋でシンプルなデザインをもたらしたのだと思います。将来、このままテクノロジーが進化していくとすると、究極のiPhoneデザインとは一体どのようになると考えていますか?

《iPhone X》についてはあなたに同感で、非常に大きな変化を遂げたと思います。これ以前は、エンクロージャー(筐体)とディスプレイという、個別のコンポーネントが存在している感覚がありました。私たちが常に目指していたのは、その異なる部品と考えていたものを統合させるという本質に取り組むことです。《iPhone X》をその視点で見ると、長い年月をかけ、とうとう私たちはそれを達成することができたのだと思います。しかし、先進的な考えがここで止まるわけではありません。もちろん、私たちにはさらにたくさんのビッグアイデアがありますし、実際にもう取り組んでもいます。本当はそれについても喋りたいところですが(笑)。ただ言えるのは、今がとても重要な時点だということです。iPhoneの一つの結末というよりも、むしろ新たな章と、その発展の始まりなのですから。
ワイヤレス充電に対応することで、複数のデバイスが一度にチャージ可能に。
Q 初代iPhoneは、その後10年間にわたりスマートフォンのスタンダードとなるものでした。今回発表された《iPhone X》では、画面がフルスクリーンになり、従来のホームボタンが廃止されました。この新しいデザインは、次の10年間における新たなスタンダードになると考えていますか?

数年前になりますが、デバイスによるユーザーの認識は非接触式になり、そうすることでプロダクトはよりシンプルに、より堅牢になるというビジョンについて、私は語ったことがあります。その通り、私たちは指紋を読み込むためにボタンに触れるという物理的な接触ではなく、ユーザーを認識させる方法を見つけ出しました。ユーザーの顔を非接触で認識し、マッピングする「Face ID」です。その技術を採り入れることで、iPhoneに触れることなく、ある種ピュアなままで使うことができるようになりました。デザイナーとして悩ましいのは、物理的に存在する形が、その機能を理解する上において重要であるにもかかわらず、形あるものを取り除くためにデザインしているというパラドックスがあるということです。デザインのシンプルさは、ユーザーのコンテンツを最適な状態で提示するためのものです。もちろん、それが崇高で根源的なデザイン哲学であると考えていますが、シンプルにすることがすべてだとは思っていません。例えばかつての携帯電話のディスプレイは、単独の機能しかありませんでしたが、思い出すと不思議な気分になりませんか? 私は以前、ビデオプレゼンテーションで、ジェスチャーが物理的なボタンにとって変わると予言しました。それこそが10年前に始めたことなのですが、《iPhone X》こそがこの長きにわたるビジョンの、新しいスタンダードだと思っていますし、そうなればいいと願っています。こうして発表できたことを本当に嬉しく思っています。もしかすると、さらに2年以上開発に時間がかかる可能性もあったほど、かつてないほど難しいプロジェクトでしたし、このプロダクトを無事製品化できたのが、iPhoneが発売されてちょうど10周年にあたったということは、本当に素晴らしい偶然の一致だったのですから。
発表会場で《iPhone X》を試すジョナサン・アイブとCEOのティム・クック(右)。