【RAIZIN presents】集中連載! nendo 佐藤オオキのひらめきのスイッチ 朝井リョウ | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

【RAIZIN presents】集中連載! nendo 佐藤オオキのひらめきのスイッチ 朝井リョウ

佐藤オオキがインタビュアーとなって、毎号、話題のクリエイターをゲストに招く集中連載。第4回は平成生まれの直木賞作家、朝井リョウさんです。

逆算によって導き出す、価値に気づくまでのプロセス。

学生作家としてデビューし、一般企業に就職。2015年、約3年勤務した会社を辞め、専業作家となった朝井リョウさんが今回の佐藤オオキの対談相手だ。形を通してモノの“真”を伝えるデザインと、最後のページで真実を明かす小説。二人のひらめきの姿勢には、意外にも共通項が多いようで……。

興味の対象の中に入って内側からのぞいてみる。

佐藤 自身の置かれている環境は、作品に影響すると思いますか?
朝井 僕は環境に左右されるほうだと思います。シロアリ型なので。
佐藤 ……シロアリ型ですか!?
朝井 つまり、ある環境に入って、内側から食い尽くすようなことをしてしまうんですよね。初めは題材として意識していないのに、中から見ているうちに書きたくなるというパターンが続いています。
佐藤 朝井さんが書いてきた、スクールカーストや就職活動もシロアリ型執筆から生まれたんですね。気になる題材の中にわざと入って、仕掛けていくんですか?
朝井 “仕掛かってる”というか。目的にすると、色眼鏡で見て捏造してしまうかもしれないので。
佐藤 純粋に興味を持ったものに、一度入り込むんですね。
朝井 佐藤さんは、一目で本質的な価値がわかるようにデザインしているけど、僕はその価値に気づくプロセスを書いているので、まず環境やシステムを肯定して、乗っかる必要があるんだと思います。
佐藤 興味の対象は関連性があるんですか?
朝井 掘っていくと、同じ地平にあったと気づくことはあります。最近、興味を持ったのが、「デスマッチ」と「日本語ラップ」と「ストリップ」。一見バラバラなようで、言い訳なしの行為という共通点があったんです。推敲を繰り返す小説と真逆に位置するような。
佐藤 そういう即興的な表現は、得意ではないと思いますか?
朝井 できるようになりたいです。大事なのは、かかった時間よりも熱量だと僕は思うので。
佐藤 その熱量を創造へと変えるスイッチはありますか?
朝井 考えてはみたんですが、どこにそのスイッチがあるか、本当にわからなくて……。
佐藤 規則正しくやるかギリギリまで追い込むか、どちらがクリエイティブを発揮しやすいですか?
朝井 きちんとやるタイプです。プロットも初めに全部決めますね。
佐藤 逆算型だ。僕も完全にそうで、安定してツーベースは打てるけど、ホームランは打ちづらい。
朝井 わかります。逆算しないほうが突破力のある作品が書けるとは思いますけど。僕の場合、最初にこの話で一番傷つく人を決めて、爆破された建物の本来の形を遡るように構成を考えていくんです。キャラが自然と動くようなことはないですし、そういうことを言う作家は嘘つきだと思う!
佐藤 柔軟そうに見えて、突然心のシャッターを下ろしますね(笑)。作品について、人と話し合うことはあるんですか? 
朝井 ほぼないですね。担当の編集者さんでさえ、話しても伝わらないことが多い気がしています。
佐藤 でも、頭の中には作品のイメージがちゃんとあるんですよね。
朝井 はい。人によっては震度1かもしれないけれど、自分にとっては震度7に感じる小説を書くのが好きなんです。なんてことないシーンでも、主人公の目を通すと戦場のような恐ろしさを持つような。そのギャップこそ、その人がこの社会で小説を書く意味なのだと思うので。その部分を言葉で伝えるのは難しいので、書く前の段階ではあまり共有できないんです。
佐藤 コンセプトだけ説明しても理解してもらえないことは僕にもよくあります。なので、早く物質化することを重視していますね。
朝井 スピードが上がればいいのにとは常に思ってます。文章って筋トレみたいに、量を書けばうまくはなる。自分なりの目線を持ちつつ、量も書けることが夢ですね。
佐藤 同じく筋トレ型だから、わかります。ちなみに、作家における編集者ってどういう存在なんですか? デザイナーがクライアントからオーダーを受ける関係とはちょっと違うんですよね?
朝井 作家によるとは思いますが、以前は訓練の意味でもオーダーはありました。でも、ゲンキンな話ですが、『何者』で直木賞をいただいてから一切なくなりましたね。
佐藤 わかりやすいですね(笑)。お話を聞いていると朝井さんは分析好きなんだなと感じますが、その目をご自身にも向けてますよね。
朝井 僕がこれまで書いてきたのは、読者に対して「味方だよ」とぎゅっとしながら、背中からナイフを突き刺すという話で。その刃は読者を貫通して僕にも刺さってるんです。じゃないとフェアじゃない。自分を棚上げしないことは大事。自己否定は年を重ねるほどできなくなると思うので、できるうちにしておこうと思ってます。
佐藤 身を削って書いていると。
朝井 というより、自分が作品の外にいないよう気をつけています。
『何者』(新潮社) 就職活動を控え、何者かになろうとする若者の本音と自意識をあぶり出す。16年に映画化。
『風と共にゆとりぬ』(文藝春秋) 累計77,000部を記録した『時をかけるゆとり』に続くエッセイ集第2弾。
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