土田貴宏の東京デザインジャーナル|エルメスのウィンドウを飾る、道具のスペクトル | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

土田貴宏の東京デザインジャーナル|エルメスのウィンドウを飾る、道具のスペクトル

マイク・エーブルソンが手がけた銀座メゾンエルメスのショーウィンドウ「ツール・ルーツ」は、古今東西の多様な道具をユニークな視点で分類。〈エルメス〉のアイテムも考察の対象になっている。

ロープとは、たくさんのものを抱える人の行為から生まれたとも考えられる。多様なロープがリサーチの対象になった。
壁面に見える竹は独特の素材で、カットするだけで器になり、削ぐとロープに近づいていく。
ロープとは、たくさんのものを抱える人の行為から生まれたとも考えられる。多様なロープがリサーチの対象になった。
壁面に見える竹は独特の素材で、カットするだけで器になり、削ぐとロープに近づいていく。
「今回の展示は、ウィンドウディスプレイとエキシビションの中間のようなものです。ハードウェア・ショップ(日本の金物屋にあたる)では、その店が扱うツールをウィンドウに飾ることが伝統として受け継がれています。一方、ギャラリーは考察と再検証のための場です。私は昔ながらの金物屋を参照しながら、そこで扱われるものを違う角度から認識し直しました。この展示を観た人が、何かが多少でもいつもと違って見える感覚を得られたら、とてもうれしいです」
手のひらをもとに生まれたシンプルな器は、ロープの要素が加わるとバッグに発展。手前にはエルメスのバッグを展示している。
アキッレ・カスティリオーニやチャールズ&レイ・イームズはじめ、昔からあったものを収集して考察し、創造に生かした著名なデザイナーは少なくない。この展示では、そんな考察のプロセスそのものに、デザイナーの創造性や個性が発揮されることがわかる。さまざまな道具は、たとえば器の原型が手のひらで形のないものをすくう行為であるように、人間の身体が原点にある。ツールのルーツを探り、発展の道筋を考えることは、先史時代から継承される普遍の法則を見つめようとする試みに違いない。今回のショーウィンドウでは〈エルメス〉の製品を対象に加えることで、その普遍性が、現在もなおもの作りの本質にあることを明らかにしている。

「Tool Roots」

〈銀座メゾンエルメス〉

東京都中央区銀座5-4-1
TEL 03 3569 3300。~7月25日(火) 11時〜20時(日曜〜19時)。公式サイト

土田貴宏

つちだたかひろ  デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。