土田貴宏の東京デザインジャーナル|エルメスのウィンドウを飾る、道具のスペクトル | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

土田貴宏の東京デザインジャーナル|エルメスのウィンドウを飾る、道具のスペクトル

マイク・エーブルソンが手がけた銀座メゾンエルメスのショーウィンドウ「ツール・ルーツ」は、古今東西の多様な道具をユニークな視点で分類。〈エルメス〉のアイテムも考察の対象になっている。

色のスペクトルに3つの機能を当てはめて、わかりやすく伝える発想はマイク・エーブルソンならでは。
ウィンドウの中央には、三原色に3種類の道具を当てはめたカラーチャートがある。3つの道具からさまざまなツールが生まれてきたことを、三原色の組み合わせが多様な色を作り出すスペクトルになぞらえて表現しているのだ。このスペクトルに対応して道具が配置してあり、エーブルソンのリサーチの成果が直感的に理解できる。植物の繊維を生かして作られるザルやカゴが器とロープの間にあったり、スプーンとフォークがかなり離れた場所にあったりと、ここにはいろいろな発見や驚きがひそんでいる。
棒とロープの2次元のスペクトルには、その中間にブラシ、筆、刷毛などが並ぶ。
こうした道具のリサーチをエーブルソンが始めたきっかけは、以前、キャンプ用のテントを設置していた時の気づきだったという。テントのロープを固定するペグを地面に突き刺そうとしても、手の力だけではできなかった。彼のポケットの中にあったスマートフォンは、こんな場合はまったく役に立たない。そこで必要だったのは、万能のはずのスマートフォンよりも、ハンマー代わりになる1本の棒だった。

「一般に、最も先進的な道具は最も新しい道具だとされています。しかし私は、その道具が生まれた時代にこだわらず、それらの形態を純粋に同列のものとして、個々の道具の差異に着目しようと考えました。そこで棒は青、ロープは黄色、器は赤というふうにツールに色を当てはめました。色には優劣がないからです」
カッティングの美しい〈サンルイ〉のカクテルグラスも、ボウルと棒の組み合わせで構成されている。
ロープ、棒、ボウルのコンビネーションが〈エルメス〉のハイヒールへと変化するドローイングが興味深い。
洗練された〈エルメス〉の製品も、古来からある道具の機能と関連づけられている。
カッティングの美しい〈サンルイ〉のカクテルグラスも、ボウルと棒の組み合わせで構成されている。
ロープ、棒、ボウルのコンビネーションが〈エルメス〉のハイヒールへと変化するドローイングが興味深い。
洗練された〈エルメス〉の製品も、古来からある道具の機能と関連づけられている。
またメゾンエルメスの壁面にある16個の小窓には、〈エルメス〉の製品を棒、ロープ、ボウルの3つの要素に分解したスケッチが、商品とともにディスプレイされた。わかりやすいのは脚付きのグラスで、ボウルと棒の組み合わせでできている。ハイヒールなら、ヒール部分には棒の、ソール部分にはボウルの、ストラップにはロープの要素がそれぞれ隠れている。こうした考察は、展示した商品のスケッチを描きながら発想していったそうだ。デザインの原型を探る独自の視点が、〈エルメス〉のきわめて上質な製品を読み解き、機能や構造の秘密を解き明かしている。