貴重な民藝の記録フィルムが〈ATELIER MUJI〉で上映中です。 | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

貴重な民藝の記録フィルムが〈ATELIER MUJI〉で上映中です。

ろくろを回す濱田庄司、壺の表面を掻き落として紋様をつけるバーナード・リーチ。現在、民藝運動の現場を記録した貴重な映像が上映されています。このフィルムの保存・修復を手がけているカナダ出身のマーティ・グロスに聞きました。

「民藝運動フィルムアーカイブ」より。(c)Marty Gross Film Productions Inc.
マーティ・グロスが「民藝運動フィルムアーカイブ」を始めたのは、バーナード・リーチの著書にあった一節がきっかけだった。

「日本文化、特に陶芸に興味があったのですが、1970年代には英語で日本文化を紹介する本は鈴木大拙の禅の書物など、今ほど多くなかったんです。そのうちの1冊がリーチの『A Potter in Japan』(邦題『バーナード・リーチ 日本絵日記』/講談社刊)という本でした。その中に、彼が日本で民藝に関するフィルムを撮影した、という一文があったのです」

自身も常滑などで焼き物の研究をしていたマーティ・グロスは早速、イギリスのリーチの家を訪ねる。リーチは存命だったがほとんど目が見えない状態で、妻のジャネットさんが世話をしていた。

「ジャネットさんは最初、夫のフィルムが使い物になるのかどうか心配していました。『彼は不器用な人だから』というんです」

しかし、映像はとても貴重なものだった。
バーナード・リーチが使っていた16ミリフィルムカメラと同型のモデルが会場には展示されている。 photo_Satoshi Nagare
「リーチが使っていた16ミリのフィルムカメラと映写機は1930年代当時の価格で500ドル前後、車より値のはる極めて高価なものです。普通の人には手が届かないから、今のように簡単に映像が撮れるわけではありません。何よりも日本の地方の民藝運動を映像で記録したものはとても少ないんです」

放っておくとフィルムはどんどん劣化してしまう。そこでフィルムの収集に乗り出した。

マーティ・グロスが集めたフィルムのうち、リーチが撮影したものは1934年の来日時に、柳宗悦の案内で益子や京都、九州を回ったときのものが中心だ。民藝の制作風景のほか、相撲や東京・八王子に今も残る「車人形」と呼ばれる人形芝居、最後の忍者とされる男性が“忍術”を使う様子など、バラエティに富んでいる。当時の日本の住宅や風俗を撮った映像はとても少なく、その意味でも希少なものだ。

リーチのスタジオに保管されていたフィルムを手始めに、日本中を回ってフィルムを探し求めた。駒場の日本民藝館や東京国立近代美術館フィルムセンターはもちろん、丹波や大分などにも出かけた。個人が所有しているものもあり、今も埋もれたフィルムを探し続けている。

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます