土田貴宏の東京デザインジャーナル|モビールとミラーに可能性を探る新鋭たち | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

土田貴宏の東京デザインジャーナル|モビールとミラーに可能性を探る新鋭たち

今秋、多くのデザイナーやブランドの新作が展示される中で目を引いたのが“モビール”と“ミラー”。どちらも目新しいアイテムではないが、そのポテンシャルを意外な発想によって引き出す試みがいくつも見られた。

角田陽太の《キャストミラー》。「Industrial Design」展では、そのデザインのプロセスで参照した石鹸入れや、形を検証した試作品なども展示された。
今秋、鈴木啓太とともに二人展『Industrial Design』を行った角田陽太は、ミラーとオブジェの中間のような存在感を持つ《キャストミラー》を展示。0.1mm以下のレベルで形態を調整することもあるという彼による、フォルムへの執着が表現された作品だ。形は円と、かなり円に近いが四角形を思わせるタイプの2種類。いずれも立体的で、縁が丸みを帯びている。内側からふくらんできたような、または四角いものが長い時間をかけて削られていったような、神秘的な美しさ。そこに世界が映り込むというおもしろさがある。
周囲の様子を、曲面によって変化させながら映し出す角田陽太の《キャストミラー》。
ミラーとモビールに共通するのは、デザイナーがデザインしきれない要素があるということだ。ミラーに映るものや、モビールの動きは、シチュエーションによって異なり、また刻々と変化し続ける。それぞれに一種の機能がそなわっているが、その枠に収まりきらない美しさや魅力があり、それはデザインの領域を広げることにつながる。家具ともアートとも違う存在感が、空間にどんな影響を与えるか。その可能性を考えるのは、これからのデザインのテーマとしても興味深い。

土田貴宏

つちだたかひろ  デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。