土田貴宏の東京デザインジャーナル|深澤直人が引いた、工芸とデザインの“境界線” | ページ 2 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

土田貴宏の東京デザインジャーナル|深澤直人が引いた、工芸とデザインの“境界線”

デザイナーの深澤直人がディレクションし、〈金沢21世紀美術館〉で開催されている『工芸とデザインの境目』展。あえて1本の線を展示室に設定することで、工芸とデザインの関係を多方面からとらえている。

展示について説明する深澤直人。「1本の線を引くことで、これはデザイン、これは工芸というところから対話が生まれるはず」と話す。
「工芸とデザインの分け方にはいくつもの見方があって、その線が見えたり隠れたりする。きっちりと分けることはできませんが、本質を見きわめるために二元論的に考えることには意味があるはずです」と深澤。

何かの答えを提示するのではなく、この考え方をもとに「工芸とデザインについての思考や議論を喚起するのが目的」と彼は話す。
工芸とデザインの境界線上のものが展示された空間。いちばん奥のほうきはアメリカのシェーカー教徒によるもので、深澤自身が所有している。
展覧会の最初の展示室は、あえてすべての展示品が境界線の線上に置かれている。開化堂の銅の茶筒、有次の包丁、南部鉄器、アルミ打ち出しの行平鍋、漆塗りの応量器といった、日本の職人が作る工芸色の濃いものが多いが、製造のプロセスや使われ方などからデザインとして優れていると判断された。1点ごとのキャプションで、深澤がそれぞれの工芸のどこにデザインを見たのか、またはデザインのどこに工芸を見たのかが解説されている。

また別の展示室では、漆器の汁椀とプラスチック製の製造のプロセスとともに併置してある。
右側のプラスチックに塗装を施した汁椀をもとに、金沢の職人が左の漆器の汁椀を製作した。
漆器は工芸で、プラスチックの椀はデザインの範疇だが、現在は漆にそっくりの質感や色合いを工業的に再現できるため、完成品はほぼ見分けがつかない。しかし価格は2桁は違うだろう。プラスチックの椀は量販店で購入したもので、金沢の職人の協力のもと、それと同じ形の椀を木地と漆で再現したという。

「現在は、漆器として流通していても木地はプラスチックということが多いんです。工芸と思われているものが、100%の工芸とは限りません」と深澤。