DESIGN
土田貴宏の東京デザインジャーナル | イタリアモダンの伝説、ふたたび。
July 11, 2014 | Design | casabrutus.com | text: Takahiro Tsuchida
家具やプロダクトの展示会を中心に、主に東京で見つけた新しいデザインのトピックを取り上げる「東京デザインジャーナル」。デザインジャーナリスト・土田貴宏が厳選してお届けします。
今季のカッシーナ・イクスシー青山本店の新作展のニュースは、新しくカッシーナに加わった〈シモン〉のコレクションが披露されたことだった。シモンは1968年にディノ・ガヴィーナによって設立された伝説的な家具ブランドで、時代を先駆けるラインアップで一時代を築く。たとえば高濱和秀の《TULU》は1968年のデザイン。1957年にイタリアでガヴィーナと出会い、以降の生涯をボローニャで過ごした高濱の作風には、製品名に象徴されるように東洋の美意識がにじむ。従来のモダニズムの枠に収まらないストイックさと詩的さは、現在から見てもまったく色褪せていない。またシモンといえばマン・レイやメレット・オッペンハイムといったアーティストによる家具も有名で、それらはガヴィーナの文化的素養を物語っている。
ガヴィーナは、カッシーナの創業者であるチェザーレ・カッシーナの1950年代からの盟友だった。照明ブランドの〈フロス〉を1962年に共同で創業したことからも、彼らが住空間についてヴィジョンを共有していたことがわかる。しかしカッシーナがイタリアを代表するブランドとして発展したのとは対照的に、近年のシモンは知る人ぞ知るブランドになっていた。ファッションの世界では、しばらく表舞台になかったブランドが、資本が変わって見事に“今”のものとして生まれ変わることがある。今回のシモンの再デビューは、そんな流れがインテリア界に波及したようにも見える。過去の遺産を尊重しながら、今はなきガヴィーナの先見性を受け継ぐような、新しい展開にも期待したい。
ガヴィーナは、カッシーナの創業者であるチェザーレ・カッシーナの1950年代からの盟友だった。照明ブランドの〈フロス〉を1962年に共同で創業したことからも、彼らが住空間についてヴィジョンを共有していたことがわかる。しかしカッシーナがイタリアを代表するブランドとして発展したのとは対照的に、近年のシモンは知る人ぞ知るブランドになっていた。ファッションの世界では、しばらく表舞台になかったブランドが、資本が変わって見事に“今”のものとして生まれ変わることがある。今回のシモンの再デビューは、そんな流れがインテリア界に波及したようにも見える。過去の遺産を尊重しながら、今はなきガヴィーナの先見性を受け継ぐような、新しい展開にも期待したい。
カッシーナ・イクスシー青山本店で取り扱うシモンの家具コレクション。楕円のミラーはマン・レイの「Les Grands Trans-Parents」。242,000円。●〈カッシーナ・イクスシー青山本店〉東京都港区南青山2-12-14 ユニマット青山ビル1、2、3F TEL 03 5474 9001。 http://www.cassina-ixc.jp
illustration Yoshifumi Takeda
土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。