土田貴宏の東京デザインジャーナル|「雑貨展」に見るセンスと批評性 | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

土田貴宏の東京デザインジャーナル|「雑貨展」に見るセンスと批評性

六本木の〈21_21 DESIGN SIGHT〉で「雑貨展」がスタート。多彩な出展者の視点を通して、雑多で複雑な“雑貨”のおもしろさを雑誌的に見せている。

デザイナーの野本哲平による「雑種採集」は、今回の展覧会のクライマックスのひとつ。彼が“採集”したのは誰かが手作りした道具や日用品。生活の中のニーズに応じて、デザイナーでも職人でもない人々が身の回りにある素材から自由に作ったものが多く、DIYというよりはアウトサイダー・デザインと呼びたくなる。
自分や家族のために作ったものばかりなので、人づてでその存在を調べて収集したという野本哲平の「雑種採集」。作り手の世代や職業はさまざまで高齢者も多い。ラジカセのタオルハンガーにも注目。
ティシュー箱のサイズがメーカーによりわずかに違うことを利用して、2種類のティシュー箱を引き出し状に組み合わせた4段重ねの小物入れが秀逸。手製の杖や自転車のハンドル用の風防なども、雑に見えて驚くほど細かい工夫が凝らされていたりする。「雑貨=商品」という常識を超えて生まれたものは、もの作りという行為の原点とつながりながら、時に人を笑わせるパワーを持つ。
町田忍による「キッチュな生活雑貨パッケージ」より。1961年の登場以来、マーブルチョコレートのパッケージはこうして何度も変更されてきた。
コンパクトなスペースではあるが、庶民文化研究家の町田忍による「キッチュな生活雑貨パッケージ」も圧巻。明治製菓のマーブルチョコレートの歴代パッケージはじめ、シウマイ弁当のしょうゆ入れ「ひょうちゃん」、正露丸の箱、ミントのケースなどがケースにぎっしり並んでいる。

ここで展示されているのは、1950年生まれの町田忍が小学生の頃から収集しつづける膨大なコレクションのごく一部だという。こうして記録する人がいなければ、時代とともに形が変わり、忘れ去られていくものも多い。雑貨というものの宿命的な儚さが、リアリティーをもって伝わってくる。