モダンな焼き締めに釘付け! 鮫島陽 展@OUTBOUND|輪湖雅江の器とごはん | ページ 3 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

モダンな焼き締めに釘付け! 鮫島陽 展@OUTBOUND|輪湖雅江の器とごはん

器は料理を盛ってこそ!ということで、人気作家の最新作を発表する個展に合わせて、作家本人にも料理を作ってもらっちゃおう…という無茶ぶり企画6回目。「炭化焼成」という手間のかかる技法でモダンな焼き締めのうつわをつくる若手作家、鮫島陽の工房を訪ねました。うつわ中心の500点が並ぶ個展は、10月2日から東京・吉祥寺の〈OUTBOUND〉で開催。

柔らかさと緊張感を併せ持つ、この美しい曲線を見て! 鮫島のろくろの前にある、「真横からのフォルムがきれいに見えるかどうかを見る」ための棚。うつわは焼く前と焼いた後、2回磨いてつるんと滑らかに仕上げる。
焼き物を始めたころからつくっていた炭化焼成の塩壺。この丸みが鮫島のつくる形の原点。直径10cmほど。
取り皿にぴったりなプレートや高台小浅鉢(中央)。一枚一枚グレーの色合いが違うので、積み重ねた景色も美しい。
4回焼成すると、石のように硬質で、複雑なニュアンスと色気のある白になる。「釉薬を使わなくても、ここまでいろんな表情のうつわができる。炭化焼成のそういうところに惹かれます」と鮫島。個展にも並ぶ予定の新作。
キッチンの一角にある食器棚。鮫島や成田のうつわのほか、2人が好きな作家ものも並ぶ。
左は鮫島のリム皿、右は成田のプレートなど。成田のうつわは、成形した後に水で溶いた灰など塗りながら磨き、焼成後に漆を焼き付けて仕上げる。しっとりした質感とプリミティブな丸みが魅力。
「自分ひとりの世界じゃないことに気づく。そこにうつわをつくる価値がある」と鮫島は言う。「うつわの周りには、料理人がいる。盛る人がいる。食材を育てたりつくったりした人がいる。食べる人がいる。自分が食べることも、食べるための道具をつくることも、同じ延長線上にある。豊かだな、うつわをつくる行為は孤独じゃないんだなって思います」

「私たちはよく “つくり手” と呼ばれますが、世の中みんなつくり手ですよね。家庭をつくり、料理や食卓をつくり、生活をつくっているんだから。私は自分のうつわを、“つくり手” として果敢に使ってもらえた時がいちばんうれしい。自分の生活をつくるためにこのうつわを選んで、積極的にクリエイティブに使ってもらいたい。どんどん自分のものにして、育ててもらいたいです」
炭化焼成の工程。楕円形の陶器がサヤ。ここに成形したうつわともみ殻を詰めて窯に入れる。もみ殻が焼けて沈む過程で、うつわの表面が炭素を吸って模様になる。
グレーの濃淡や景色は、窯の中の温度やサヤに詰める具合で変わる。「サヤの上部に詰めたものは灰色が軽め、下のほうは暗めでこってりめのグレーが出ます。温度を短時間でガッとあげると水墨画調の景色になるし、時間をかけてじっくりあげると全体がきれいなグレーになる。ある程度はコントロールできるけれど、実際はほぼ火まかせです」
工房内、鮫島のろくろがあるスペース。奥の棚に並ぶのは、鮫島と成田それぞれのうつわ。
鮫島のろくろスペース。「最初は花器ばかりつくっていました。基本的に私は用途があるものをつくるのですが、花器は”焼かれた石”という炭化焼成独特のテクスチャーに集中できるところがおもしろくて」。窓際には縄文土器の大型本も。
夫の成田周平(左)は玉づくりというプリミティブな技法でうつわやオブジェを制作。2人とも自分へのダメ出しポイントが異なり、鮫島は形が気に入らないとダメ、成田は焼きの加減を大切にする。鮫島いわく、「成田くんは自然体で形をつくるのも早い。普通は手びねりよりろくろのほうが早く成形できるはずなのに、ウチでは私のほうが時間がかかるんです」。
今回の個展会場はうつわ好きにはおなじみの店、東京・吉祥寺の〈OUTBOUND〉。ちょうど1年前、鮫島にとって東京での初個展が開かれた場所でもある。昨年は塩壺や花器が多かったが、今年、店主の小林和人さんから出されたお題はずばり、食器としてのうつわ。このシンプルなテーマを受けて鮫島がめざすのは、いったいどんなうつわなのだろう。

「“何年も使って古くなったらカッコよさそう” って思ってもらえるうつわ。欠けたり汚れたりした姿もイヤじゃない感じが理想です。さっき、好きなうつわがいいうつわって話しましたが、もっと言うなら、手が行くうつわがいいうつわになる。手が行くっていうのは、必ずしも使いやすいということではありません。むしろ、ちょっと緊張感をもったり、特別な気持ちになったりするような、それでも果敢に使ってもらって愛情をいっぱい受けるような。そういううつわを作りたいです」

リムプレートや汁鉢、おにぎり皿などの新作(きっと白いうつわも!)も含めて約500点が並ぶ鮫島陽展。きっと自分だけの “いいうつわ” に出合えるはず。
さめじま・みなみ
1995年長野県生まれ。子供時代はスキーの強化選手だった。〈自由の森学園高等学校〉を卒業、〈多治見市陶磁器意匠研究所〉で陶芸を学び岐阜県多治見市で制作開始。昨年愛知県豊明市に工房を構えて作陶中。〈OUTBOUND〉での個展は1年ぶり。うつわ中心の500点が並ぶ。

『鮫島陽 個展』

〈OUTBOUND〉
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-7-4-101 TEL 0422 27 7720。10月2日~10月12日。11時~19時。会期中は6日火曜休。作品の一部は特設サイト)でも販売予定。

Masae Wako

わこまさえ  編集者・ライター。インテリアと手仕事と建築と日本美術にまつわる雑誌の仕事が中心。カーサブルータス本誌では〈かしゆか商店〉番頭。

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