デザインで巡るチェコ100年の旅へ|青野尚子の今週末見るべきアート
2018年、建国100年を迎えたチェコのデザインの1世紀をたどる展覧会が始まりました。〈チェコ国立プラハ工芸美術館〉の所蔵品を中心に、かわいいものからシャープなものまで、チェコ・デザインのさまざまな顔が楽しめます。
1939年、ナチス・ドイツに併合され、第二次世界大戦に巻き込まれていったチェコでは工業生産は停滞し、その代わりに民族的な装飾を活かしたデザインが復活した。木で作ったスツールや器など、素朴な味わいのあるプロダクトは日本の民藝にも通じる。
戦後、社会主義の締め付けが一段落した1950年代後半からは「チェコ版ミッドセンチュリー」とでも言うべきデザインが登場する。宇宙への有人飛行の成功を受けて、軽さ、無重力を想起させる形が流行した。またプラスチックによる製品が大量生産されるようになり、有機的な形態とポップな色合いのデザインが量産される。
80年代に世界の建築・デザインを席巻したポスト・モダンの波はチェコにも及んでいた。厳格な機能主義に縛られない、装飾的な意匠を追求するものだ。トーネットの椅子を改変したものなど、とくに家具の分野でユニークなデザインが登場する。
1989年の「ビロード革命」に続く一連の社会体制の変動により、2004年にはチェコはEUに加盟した。西側からより多くの情報が入ってくるようになり、亡命していたデザイナーも戻ってくる。チェコには新しく多くの家具メーカーが設立され、チェコのデザイナーとコラボレーションしてそれまでにない家具を生み出している。
展覧会の最後にはテーマ展示として子どものおもちゃとチェコ・アニメーションの資料が並ぶ。20世紀初頭の素朴な木の人形や60〜70年代のプラスチックを使ったカラフルなおもちゃはどれも日本のものとはひと味違う、独自の愛らしさがある。日本でも人気の「もぐらのクルテク」などアニメのセル画も貴重だ。